若い頃に突っ走ったから、今日がある

―― 映画の中で香里奈さんは、やや突っ走りがちな主人公を優しくなだめ、諭す役回りです。香里奈さんには、ご自身が若かった頃このように諭してくれた人はいましたか?

香里奈 私の場合はその逆で、「突っ走れ!」と言われていました(笑)。仕事って、頑張りどきがあるじゃないですか。特に10代から20代は、30代から40代の基盤となるものをつくる時期なので。当時は忙しいことを忙しいと思う暇もないくらい多忙で、目の前の一つひとつをこなすことに精いっぱいでしたが、自分もまわりも「今は絶対に頑張りどきだ」という思いが一致していたので、とにかく突っ走っていましたね。

 その分たくさん怒られもしたけれど、今日この場にいられるのもあの時期の頑張りがあったから。突っ走らせてもらえて、本当にありがたかったですね。

―― 香里奈さんご自身は、日ごろ後輩の皆さんにどのように接していますか?

香里奈 基本的にはこのままなのですが、あえて構えずに、近所のおばちゃんみたいにしゃべります(笑)。自分が後輩だったときは、先輩から気にかけてもらえることがすごくうれしかったんですよね。だから、目の前の後輩が当時の自分と似たような境遇だったり、「私にもこういうときあったな」と思ったりするときには、声を掛けるようにしています。

 とはいえ、中には声を掛けられるのがうれしくない人もいると思うので、相手が緊張しないように、あくまで当たり障りのない会話をしますね。普通にしゃべることで、自然と緊張も解けると思うので。

今「おもいで写眞」を撮るなら、渋谷

―― 映画の中で高齢者の方々は、おのおのにとって特別な場所で「おもいで写眞」を撮影しています。香里奈さんがもし今「おもいで写眞」を撮るとしたら、どんなロケーションを選びますか?

香里奈 遺影に使う「おもいで写眞」を撮りたい場所はまだ思い浮かばないので、それを探すのはこれからの楽しみにしたいと思いますが、これまでの人生の「おもいで写眞」として撮るとしたら……地元名古屋のテレビ塔、15年間通ったバレエ団のスタジオ、名古屋から通いで仕事をしていたときに使っていた東京駅とかですね。うーん、一カ所に決めるのは難しいです。

 でも、誰でも分かる土地で選ぶなら、渋谷かな。渋谷はぎゅっとした街ですし、地方出身者でも「ハチ公で待ち合わせね」と言えば分かるので、上京してきたばかりの頃に地方組の俳優さんたちと遊ぶのは、いつも渋谷だったんです。今はだいぶ街並みが変わってしまったけれど、とても思い出深い土地ですね。