現在、多目的スポーツ車(SUV)「CX-3」に乗る日経xwoman編集部員Oと、以前の職場の先輩で、「CX-30」に乗る日経ビジネス編集部のシニア・エディターY。ふたりとも、なぜかマツダのクルマに乗っている。気に入った大きな理由のひとつは、ふたりとも「内装」だった。Oが「どんな人がデザインしているのか」とウェブ検索して行き着いたのが、マツダ・デザイン本部・ブランドスタイル統括部・デザイナー、寺島佑紀さん。現在はマツダのオフィシャルグッズの企画・開発・販売を担当する新部署に在籍している寺島さんは、2019年までクルマのインテリアのカラーデザインを担当していた。クルマのインテリアの世界観をゼロからどうつくり上げているのか、そして「男性社会」のイメージが強い自動車メーカーで、仕事とどう向き合っているのかなどについて日経xwoman doors世代でもある寺島さんに聞いた。

内装の「ステッチ」に込められたデザイナーの思い

マツダ・デザイン本部・ブランドスタイル統括部・デザイナーの寺島さん
マツダ・デザイン本部・ブランドスタイル統括部・デザイナーの寺島さん

日経xwoman編集部員O(以下、O) 中学1年の息子を、毎朝、最寄り駅までCX-3で送って行くのですが、その30分間が私にとっては掛け替えのない時間です。このクルマの中で、好きな世界観に包まれて、何とも言えない満ち足りた気分になるんですよ。

日経ビジネス編集部シニア・エディターY(以下、Y) 好みはいろいろだと思いますが、CX-3もCX-30も、ひとつの主張というか、Oが言った「世界観」を持っているのは確かだと思います。それを生み出すまでの過程に興味があって押しかけました。

O 今日はYと共にいろいろと質問させていただきます。よろしくお願いします。

マツダ・デザイン本部・ブランドスタイル統括部・デザイナー 寺島佑紀さん(以下、寺島) こちらこそ、よろしくお願いします。

O 初めてマツダの店舗で試乗したのは、5年前。CX-3に乗って直感的に「これ、いい!」と感じたのですが、当時は「ご家族で乗るなら」と薦められ、大きなクルマへの憧れもあって、CX-5(グローバル販売の約1/3、国内でも中核を成すモデル)を選びました。

 しかし、実際に乗りはじめると私には車幅が広く感じられるようになって、CX-3の、いかにも「コックピット」のようなコンパクトな運転席が思い出されて……。夫から「(CX-5は)大きいんでしょう? 小さいクルマに買い替えたら?」と言われたのをきっかけにCX-3に買い替えました。私以外の家族は夫も長女・長男も長身なため、「狭い」と文句を言われる中、「静かにしなさい」と言いながら運転しています(笑)。

寺島 クルマのサイズ感って本当に大事ですよね。大きいクルマに憧れる感覚もよく分かります。それでも、いざ乗ってみると、「ちょっと幅が広いな」とか「ちょっと高いな」とか思ってしまう。私もCX-5やCX-8を運転するときは誰かに助手席に同乗してもらい、左側を確認してもらったり、ミラーをガン見したりしています(笑)。運転の操作はしやすいので、誰でもキレイに乗れるようにつくられていることは実感しているんですけれどね。

マツダ「CX-3」
マツダ「CX-3」

O 実はCX-3に初めて試乗したときに即座にほれ込んだ部分があるんです。それは内装のステッチ(縫い目)でして。インパネやハンドルに施された美しいステッチが忘れられず、3年後に再度、試乗するときは開口一番、販売担当者に「ステッチ、なくなってないですよねっ?」と前のめりで聞いてしまったほどです。

寺島 それはすごいお客さんですね(笑)。デザイン本部のカラーデザインを担うグループが大事にしているルールのようなものがあって、ステッチもその中に入っているんです。なので、ステッチに注目してもらえて、デザイナーとして、とてもうれしいです。

Oが所有するCX-3の車内。インパネのステッチ
Oが所有するCX-3の車内。インパネのステッチ
CX-3のシートのステッチ
CX-3のシートのステッチ