背中を押してくれた「父からの言葉」

 ドラマの中で、リミのスピーチに「汝(なんじ)の道を進め、そして人々をして語るにまかせよ」というせりふが登場します。実はこれ、私が父親(蜷川幸雄)からもらった言葉。

父からもらった言葉「汝(なんじ)の道を進め、そして人々をして語るにまかせよ」をドラマの芯に
父からもらった言葉「汝(なんじ)の道を進め、そして人々をして語るにまかせよ」をドラマの芯に

 父が亡くなってから一年くらいたち、ちょうど映画を撮ろうとしていた頃、ファンの方から事務所に雑誌が送られてきたことがありました。その内容は、さまざまな著名な方の「父から子どもに伝えたい言葉」を集めたもの。父のページにあったこの言葉を目にした瞬間、背中をポンッと押してもらえた気がして、「自分を信じてやってみよう」と思えるようになったんです。

 父は常に「みんなが右に行っても、自分が左だと思ったら、一人でも左に行ける人になってほしい」「自立した女性であれ」と私に言い続けていました。だからこそ、この言葉がすごく心に響きましたね。「何かドラマの芯になる言葉はないか?」と考えていた時だったので、そのまま使おう!と取り入れました。

みんな、もっとはみだして生きていい

 ドラマの中では、リミが「#過激に生きろ」とハッシュタグをつけて、なつめの写真をSNSに投稿するシーンがあります。このハッシュタグは私自身から若い世代に向けたメッセージでもあります。

 今、ものすごく窮屈な空気が日本中にまん延していると思うんです。人と違うことを言った瞬間に弾圧されて、なんでもかんでも角を取らざるを得ないというか。そんな中で、若い世代は、何かを発したら人に否定されるという怖さを知って身動きが取りづらくなっているのではないかと。

 「誰の記憶にも残らなくてもいいから、誰にも怒られたくない」。そんな思いが、制作の現場にまで押し寄せてきていると実感しています。私は、それがとてももどかしいんです。だから、「自分が好きなように生きていいよ」「何か言われても傷つくことを恐れなくていいよ」ってことを伝えたくて、「過激に生きろ」という表現を使いました。何かにチャレンジしようとしている人の背中を少しでも押せればいいなと思って。