仕事を断らなかった20代と、効率を強く意識する今

「20代後半から35歳ぐらいまでは、仕事がすごく楽しくなる時期」
「20代後半から35歳ぐらいまでは、仕事がすごく楽しくなる時期」

 私自身、20代から40代の今まで、ずっと突っ走ってきました。気持ち的には、20代も40代も全然変わっていませんが、20代のときはとにかくがむしゃらに働きましたね。断った仕事は、ほぼないと思います。友人たちの中でも、今、トップクラスで走り続けている人はみんな、寝食を忘れ、徹底的に仕事に励んだ20代を過ごしていた記憶があります。

 20代にどれだけ走れるかっていうのは、結構重要だと思います。私にとっての20代は、思い返せば修業の時期だったのかな。以前、女性の先輩に、「20代後半から35歳ぐらいまでが、仕事がすごく楽しくなる時期だよ」と言われたことがあって。今振り返っても、本当にそうだったと思いますね。

 私は、初めての映画『さくらん』を撮った33歳の時が大きな転機でした。新しいことに挑戦できる体力も気力もまだあるので、多少むちゃもできて、20代よりは経験値があるからいろいろなことがスムーズ。「こんなに仕事って面白いんだ!」と実感しましたね。

「早く私の才能に気づいてー!」は、20代の私の言葉

 私自身、ドラマの中で「何者かになりたいけれど、それができずにもがき苦しむ」なつめの気持ちがよく分かるんです。私がそうだったから。「写真」というものが見つかるまで、ずっともがいていました。食べていけない時も、うまくいかなかったこともありましたよ。今回、20代の女性を描くにあたって、自分の20代を改めて振り返り、当時悩んでいたことや、つまずいたことをたくさん思い出しました。

 ドラマの中でなつめが「早くこの私の才能に気づいてー!」と叫ぶところは、まるであの頃の私のよう。当時、私も「なんで何者かにならないといけないの?」と思う夜もありました。

 でも、実は20代の頃の悩みやつまずきや勝ち負けなんて、大したことない。まだ道の途中なんだから、自分が今いる場所に必要以上に傷つくことなんてないんです。悩みもつまずきも、前を向いて頑張るエネルギーに変えていけたら、いいですよね

取材・文/伊藤ハルカ 写真/洞澤 佐智子 ヘアメイク/早坂香須子(W) スタイリスト/斉藤くみ