2020年3月末に企画開発し、4月に発売したマスク用ストラップ「なんでもマスク」がヒット。新型コロナウイルス感染防止対策で、マスクが逼迫したことを受け、自分たちができることはないかを考えたことがきっかけ。自社の売り上げもコロナショックで苦境に陥った。苦しい状況でも、次の一手を探り続ける姿に迫る。

販売開始後10分で850個が完売

A.Y.Judie社長の土屋香南子さん
A.Y.Judie社長の土屋香南子さん

 長野県小諸市に本社を構え、生活雑貨品を企画・販売するA.Y.Judie(エイワイジュディ)では、2020年4月にガーゼや布を簡易マスクとして使う際のマスク用ストラップ「なんでもマスク」を企画開発。販売開始後10分で、用意した850個が完売した。

端についたクリップを生地に留めると、どんな生地も簡易マスクになる、マスク用ストラップ、「なんでもマスク」。簡易マスクは、衛生マスクとは異なり感染リスクの軽減やアレルギー反応防止のためのものではないが、マスクを着用することで飛沫防止ができ、顔を触るのを防ぐ効果もある。「あくまで生活雑貨の会社なので、衛生用品であるマスクを製造・販売することには抵抗がありました。マスク用ストラップは、うちの会社ならではの商品だと感じています」(香南子さん)
端についたクリップを生地に留めると、どんな生地も簡易マスクになる、マスク用ストラップ、「なんでもマスク」。簡易マスクは、衛生マスクとは異なり感染リスクの軽減やアレルギー反応防止のためのものではないが、マスクを着用することで飛沫防止ができ、顔を触るのを防ぐ効果もある。「あくまで生活雑貨の会社なので、衛生用品であるマスクを製造・販売することには抵抗がありました。マスク用ストラップは、うちの会社ならではの商品だと感じています」(香南子さん)
左から、A.Y.Judie会長の土屋順子さん、娘で社長の香南子さん
左から、A.Y.Judie会長の土屋順子さん、娘で社長の香南子さん

 社長の土屋香南子さん(32歳)が、内職スタッフから商品を提案され、試作品を見たのが3月26日の午後。その日、香南子さんは東京の営業オフィスに戻る予定だったが、「マスクが不足する中、この商品は多くの人に役立つかもしれない」と、すぐに生産準備に取りかかることにした。

 それに加えて、経営も苦境に陥っていた。新型コロナウイルス感染への恐れが大きくなるごとに、小売店の営業時間が短縮され、在宅勤務が始まり、外出者が減った。また、小売店の週末閉店や人々の外出自粛が広まり、同社の3月の売り上げは前年同月の3割減に。「最悪のケースを想定し、銀行に融資の相談に行ったり、助成金の情報を探ったりしました」。マスク用ストラップは世の中の人のためになるだけでなく、自社をも救う商品になるかもしれないと考えた。

 早速、会長を務める母の順子さんと共に夜7時に100円ショップに飛び込み、製作に必要な材料を検討し、 東京に戻って電話会議で詳細を詰めた。

 しかし、その日のうちに商品の概要をまとめ、既知の小売店のバイヤーに商品に関する資料をメールで送ったものの、商品のイメージが湧かなかったからか、あまり反応がなかった。プレスリリースも用意していたが、リリースを公開するたびに費用がかかるシステムだったため公開するか悩んだ。

 でも「一度決めたことだし、やってみよう」と思い、4月1日夕方にリリースを公開してその日は寝た。翌朝、「これって香南子の会社だよね」と友人から連絡をもらい、自分が発信したリリースがツイッターで2万回以上リツイートされたことを知った。