林副市長入職後の四條畷市の変化と今後の課題

 子育て支援をはじめ市民の生活を第一に考えた施策が奏功し、四條畷市では課題解決にむけ大きく前進している。

【林副市長入職後の四條畷市の成果】
・2018年11月、人口増を達成
・11年ぶりに転入者が増加
・基金積立が過去10年で最高額を達成

 これらの成果を受け、改革の手ごたえを感じているという林さん。現在の施策を推進しながら、次の課題として挙げているのは「多様性のある行政」だ。

 そもそも、四條畷市が副市長を公募したのは、2017年に市長に就任した東修平さんの公約だった。28歳(当時)の全国最年少市長として選出された東さんは、選挙の際、古い組織体制の役所に多様な視点を取り入れ、新風を吹き込むことを狙いとして副市長の公募を公約としていた。

 公募には、民間の人材サービス会社「エン・ジャパン」を通じて、広域から募集を開始した。

 そして、林さんが選出され、四條畷市副市長としてのキャリアがスタートした。林さんは振り返る。

 「自分が『ママ』だからこそ気付けたことがたくさんありました。これからは、もっと違う立場の人やさまざまな視点を持った方たちと働ける環境にしていきたい。市政に携わる中、行政や都市整備においても型にはまらないことが大切だと実感しました

 こう語る一方で、林さんが民間でも行政でも共通の課題として感じたのは、女性の管理職が圧倒的に少ないことだ。

 「女性活躍が叫ばれている昨今でも、『管理職になりたくない』という女性の声をよく聞きます。それはリーダーになるプレッシャーやスキルの問題よりも、ライフステージが変わったときの働く環境がネックになっているのではないでしょうか

 例えば、行政機関の場合、有事の際には一番に役所に駆け付け、そのまま泊まり込みで任務に当たらなければならない。林さんも災害対策本部が設置されたときは夫も仕事中で2歳の子どもを預ける場所がなく、ともに出勤。周囲の理解を得て、子どもをあやしながら対応にあたっていたという。

 「これは役所だけの問題ではなく、消防や警察などの職員や公務員全般に言えること。業種によっては民間企業でもあり得る事態です。万が一の事態が発生しても、子どもを預けられる仕組みが必要だと思います。自分のやるべきこと、やりたいことができる社会にするためには、もっと私たちの手で変えられることがあるはずです」

 四條畷市では、2019年度もICTや公聴、助産師をはじめとした全7職種を広く公募する。

 市長の東さんは「公務員が決められた仕事だけをする時代は終わった」と語る。今後も民間出身者やインターンなどを採用し、より多様性のある市政を目指す。

 日本の地方自治を四條畷から変えていくーー任期満了を迎える2020年まで、林さんの挑戦はまだまだ続く。

「市民とともに作り上げることが行政のあるべき姿だと考えています」(市長の東さん)「市長のビジョンに共感し、明確なゴールがあるからこそ頑張れる」(副市長の林さん)
「市民とともに作り上げることが行政のあるべき姿だと考えています」(市長の東さん)「市長のビジョンに共感し、明確なゴールがあるからこそ頑張れる」(副市長の林さん)

取材・文/高橋奈巳(日経doors編集部) 撮影/吉澤咲子