CMディレクターとして活躍し、理解ある優しい夫と満ち足りた暮らしを送る……そんな“絵に描いたような幸せ”を手にしながらも、現実に不満だらけの30歳・女性が主人公の映画『ブルーアワーにぶっ飛ばす』。 20代で大手広告制作会社を辞めてフリーランスとなり、今作で映画監督デビューを果たした箱田優子さんと、28歳ながら15年以上のキャリアを積み、さまざまな映画やドラマで活躍を続ける主演の夏帆さん。「仕事では毎回チャレンジを続けてきた」と語る二人が、今作にかける思い、人生で悩んだときの決断や折り合いのつけ方について語ってくれました。

映画オリジナルのTシャツ。公開に合わせて作成した

初監督作品「やるしかねぇ!」

日経doors編集部(以下、――) 10月11日から公開される映画『ブルーアワーにぶっ飛ばす』は、CMディレクターとして活躍されている箱田優子さんの初監督作品ですが、どのような経緯で制作したのですか?

箱田優子さん(以下、箱田) プロ・アマ問わず映像化したい企画を応募できるコンペ「 TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM」に2016年に応募し、審査員特別賞をいただきました。今作は生まれて初めて長編脚本執筆、監督をした作品。何もないところから生まれた、奇跡的な作品だと思っています。脚本を書くのは初心者なので、本屋で買った『脚本の書き方』を参考に「カギカッコの後に句点はつくのか?」ということからでしたが(笑)。いざ撮影が始まると、監督としてのプレッシャーや気負いは感じている暇がなく「やるしかねぇ!」という感じでした

―― 夏帆さんは脚本を読んでいかがでしたか?

夏帆さん(以下、夏帆) 自分が一番やりたかった役に巡り合えたと思いました。主人公の砂田のような等身大の女性を演じてみたかったんです。脚本には、普段人には話さないけど感じる、寂しさや喪失感が描かれていて、決して劇的なストーリーではないけれど、だからこそ自分の近くにある感情が描かれていると思いました

―― 30歳の自称売れっ子CMディレクターとして働きながら、故郷の茨城にコンプレックスを抱く主人公・砂田は、箱田さんに限りなく近いキャラクターだそうですね。

箱田 砂田は自分と近しい主人公ではあるのですが、夏帆ちゃんに「私をコンプリートしてほしい」とはお願いしていないんです。私が脚本で内面をさらけ出した部分に、夏帆ちゃんが自身をさらけ出した部分を組み合わせて、現場で一緒につくり上げていきました。