全米ベストセラー『サードドア 精神的資産のふやし方』発刊を記念し、著者のアレックス・バナヤン氏が来日しました。同書は、バナヤン氏が米国各界の著名人25人に突撃インタビューを試み、成功したり失敗したりを経て成長を遂げていく7年間をまとめた、ノンフィクション冒険物語です。インタビューをまとめることを「ミッション」と位置づけたバナヤン氏は大学をやめ、集中してそのミッションに取りかかりますが……。
――今の若い人を見ていると、大きな不安に覆われているように思います。
どの年代であっても人は不安なのです。若い人は、自分の人生で何を成し遂げられるか分からず、不安になる。親世代は、子どもが危なっかしい人生を進むのではないかと不安になる。多くの人が夢に目をつぶり、うまくいかないのは、目の前に横たわる障害のせいだと思う。実は違う。夢の実現を妨げているのは、不安だからなんです。
エリオット(・ビズノー氏。バナヤン氏が成功者の調査を進める中知り合い、メンターになる)は不安を感じないために「素早く行動する」を信条としていますが、エリオットも認めている通り、それは短期的な解決法にすぎません。では長期的にはどうすればいいのか?
私はある本を読んで、不安に対する態度が変わりました。ぺマ・チョドロン(米国人の尼。主に北米で教えを広めている)の『When Things Fall Apart』(未邦訳)です。不安は人間であれば自然に経験することの一部である。受け入れることなんです。
不安はなくせないし、不安と戦っても勝てないんですよ。だから不安を敵として見るのではなく、友達のように「ここに座って一緒にお茶でも飲みましょう」と扱えば、不安は静まります。不安が静まれば、やりたいことに集中して取り掛かれる。
8月半ば、カリフォルニア州で開催されたイベントで、約3000人の若者たちを前に講演してきたばかりです。聴衆の一人の男性が、私の講演を聴いてInstagramでメッセージをくれました。毎週、不安をランチに招待することにした、というんです。自分の不安と向き合う時間をつくり「友達」になって、自分が支配されないようにという趣旨だそうです。うれしかったですね。
不安の存在を知るのは悪くない。年代に関係なく、私が読者に伝えたかったのは、「何かをする一歩を踏み出すのは怖いが、可能である」ということです。