土日には撮影がないフランス

――今回の映画には、数々の受賞歴を持つ女優カトリーヌ・ドヌーヴとジュリエット・ビノシュを起用し、フランスで撮影を進められたそうですね。フランスの働き方は、日本とは違いましたか?

是枝 全く違いました。フランスは法律が厳しく、平日の撮影が最長8時間まで。土日に撮影をしようとすると、スタッフのギャラが2倍、3倍になるんです。だから基本的に土日は撮影なし。シングルマザーであっても映画撮影の現場で難なく働くことができる。終業後に子どもを保育園に迎えに行き、自宅で家族と一緒に夕食を食べられる。撮影現場には、何人ものシングルマザーがいましたよ。

宮﨑 働き方が規則的なんですね。すごく興味深い! 特に子どもがいる人にとってはありがたいですよね。

宮本 20時までに仕事が終われば、人間らしい生活ができますからね。でも是枝監督は映画への情熱があふれている方ですし、「今日はもっと撮りたい!」と思った日もあったのではないでしょうか?

是枝 個人的には長時間撮影を続けても苦にはならないので、確かにそう思う瞬間もありました。でも、現実問題として長時間労働のせいで生活が成り立たなかったり、仕事として選べなかったりする人もいるんですよね。そういう状況を考えると、日本の映画業界も働き方を考え直していく必要があると感じました。すぐに実現するのは難しいとしても、誰かが突破口にならなくては。

フランスでの撮影を通して日本の映画業界での働き方を考えるきっかけになったという
フランスでの撮影を通して日本の映画業界での働き方を考えるきっかけになったという