メモで自分を振り返れば、夢はぶれない

―― 『メモの魔力』という本も出されましたが、内省にメモは役立ちますか?

前田 非常に役立つと思います。メモを書きながら振り返ると自分のことがよく分かりますし、モチベーションの在りかにもたどりつけます。たとえば、新卒時に「キャリアを積みたい」という気持ちが仕事上のモチベーションだったとしても、30代になると周囲が結婚したり、子どもが生まれたりすると、「これでいいんだっけ?」と迷ってしまう。でも、内省を繰り返していたら、「周囲が結婚したパターン」「周囲に子どもが生まれたパターン」と何十通りもの自己分析とシミュレーションを繰り返しているから、将来の夢がぶれることはない。メモを書いて内省を繰り返していると、「未来において後悔しない自分」になれます。

―― SHOWROOMもメモから生まれた事業アイデアだったそうですね。現在の「SHOWROOMで動画配信世界一になる」という目標もメモから生まれたのでしょうか。

前田 SHOWROOMを事業化するときも、自分がギター弾き語りをしていたときに気づいたことを書き残すメモ帳を作っていて、を参考にしました。

 「5年以内に動画配信で世界一」「30代で時価総額1兆円」という目標もメモに書いてありまして。公言してしまったので、もう後には引けないというか(笑)。でも、達成できるか、できないか分からないほど大きな目標のほうが楽しい。RPGゲームでもそうですが、ワンパンチで倒せるような敵って、ちょっとつまらないなと思っており。「倒せるか倒せないか分からないけど、僕としては全力で準備しました!」という状況で、仲間と手を取り合って進んで行くときのほうが高揚感がある。要は、難しい知恵の輪ほど、解いてる時楽しいんです。

―― doors読者には「将来の目標を見つけられない」と悩む人も多いのですが、アドバイスをお願いします。

前田 まず、自分のコンパスをしっかり持つことだと思います。コンパスとは、自分の人生における、「これを一番大事に行きていくぞ!」という、価値観の軸、と言ってもいい。そして、コンパスには「ゴールから逆算するトップダウン型」か「そのとき、そのとき目の前にあるワクワクを楽しむボトムアップ型」の2パターン、そしてその両方のメリットを取り入れた「ハイブリッド型」があります。まずは自分がどのタイプかを知って、人生の目標を設定しましょう。

 そのうえで自分の人生の軸を決める。軸を決めるには「自分は○○している時が一番ハッピー」の「○○」部分を埋めてみるといいと思います。カーナビだって出発するときには、まず目的地を入れますよね。でも、みんな自分の人生は「人にすすめられたから」「みんなと同じで無難だから」と適当な目的地を入れてしまう。自分の人生の手綱を握るのは、自分だけ。しっかり「自分だけの目的地」を入力して、正しく楽しい人生をドライブしてほしいです。

 僕も、我々SHOWROOMチームが世界一になれると信じているし、日本発の産業が世界で認められると思うと、心底ワクワクします。夢をかなえるためには、まず夢を持ち、そしてその夢に対して「根拠のない自信」を持つ。そして文字通り「夢中」になって、日々ガムシャラにやるべき事を他の人よりも多くこなす。これだけの、シンプルな事だと思うんです。この記事をここまで読んで下さった皆さんの夢が絶対にかなう事を、僕も心から願います。一緒に、最高に熱い旅に出かけましょう。

できるかできないかの大きな目標の方が楽しいという
できるかできないかの大きな目標の方が楽しいという
前田裕二(まえだゆうじ)
SHOWROOM社長
前田裕二(まえだゆうじ) 1987年東京生まれ。2010年に早稲田大学政治経済学部を卒業後、UBSに入行。11年からニューヨークに移り、北米の機関投資家を対象にしたエクイティセールス業務に従事。13年、DeNAに入社し、仮想ライブ空間「SHOWROOM」を立ち上げる。15年にSHOWROOM設立。著書に『人生の勝算』(幻冬舎)、『メモの魔力』(幻冬舎)。

取材・文/三浦香代子 写真/鈴木愛子