大切なのは具体的なビジョンを持つこと

 では、「自分の軸」をどのように定めたらいいのでしょうか。

 「将来のビジョンを考えるとき、『仕事ができる・仕事ができない』という観点だけで判断してしまう人が多いのですが、実は働き方を変えても、転職をしても、仕事と人が集まってくるのは『人間力の高い人』なんです」と藤井さんは話します。

 「いくら仕事ができても、『あの人、仕事はできるけど人として苦手なんだよね』と言われてしまったら、悲しいですよね。信頼を失ってしまうことは、自分の将来の選択肢を狭めてしまうことにつながります」

 ですから、

(1)こんな仕事を任されたい
(2)人としてこんなふうにありたい

 という2点を考えて、自分の軸を定めていくといいでしょう。この時、1年~3年といった短めのスパンで考え、状況や環境の変化によって、適宜調整することが大切です。

ビジョンを持つと、私の何が変わる?

 将来のビジョンを思い描けるようになると、日々の働き方が変わってきます。ビジョンを持つことでどんなメリットがもたらされるのでしょうか。

メリット(1) 【ネガティブな感情に惑わされなくなる】

 働く人なら誰もが覚えのある、「仕事に対するマンネリ感」。つい「同じことをするのも飽きた」「いっそ転職しようかな」と思ってしまいがちですが、このときに「私はそもそもどんな仕事を任されたかったの?」「人として、どうありたいの?」と自問自答できれば、「イヤな環境から逃げる」以外の選択肢が見えてきます。

 「転職以外にも環境を変える方法はあります。まずは、仕事への取り組み方自体を変えて、組織内でキャリアを深掘りすることを考えてみる。いきなり転職ではなく、社内で部署異動をするという手もあります。管理職になるチャンスがあれば、敬遠せずに飛び込んでみるといいですよ。権限・発言権が広がるのは、実はプラスになることも多いのです」

「ビジョンを持ってください」と藤井さん。「ビジョンがあれば、ネガティブな感情に惑わされなくなり、逃げの選択肢以外が見えてきます」
「ビジョンを持ってください」と藤井さん。「ビジョンがあれば、ネガティブな感情に惑わされなくなり、逃げの選択肢以外が見えてきます」

 逃げからの転職ではなく、冷静にキャリアアップのための転職という道を選べているかどうか、考えてみることが大切です。

メリット(2)【「チーム力」を高められる】

 仕事をする上で鍵となる、人との関わり。特に「チーム力」は女性がしなやかにキャリアを築いていくには欠かせません。

 「日ごろから自分のビジョンを明確にしておくと、『私はこう思います』『○○をしたいです』と自分の意見を伝えられるようになります。同時に『私は○○だと思いますが、どうですか?』という問いかけもできる。この問いかけ、つまりアイデアの壁打ちが人を巻き込み、チーム力を高める原動力になるんです

 実は藤井さんのセミナーに参加する人では、男性のほうが「チームプレイ」「組織」「マネジメント」といった言葉に関心が高く、女性は「自分らしさ」「自己実現」「自分磨き」といった言葉に興味を示すそうです。でも、会社で働く以上、求められるのは「チームで成果を出すこと」だと忘れないで!