ビジョンが思い浮かばない、キャリア迷子になりそうなときは?

 もしかしたら、目の前の仕事でいっぱいいっぱい、自分がどうありたいか、何をしたいかも分からない……という人もいるかもしれません。そんなときは「正しい情報をインプットできているか確かめて」と藤井さんは言います。

 「仕事が忙しい、結婚や子育てのライフイベントも忙しい、となると社会との接点がなくなり、偏った情報に惑わされる場合もあります。新聞を読むなどして、幅広く、正しい情報を得ることを心掛けましょう。読書会や勉強会など、人とつながる場に参加するのもいいですね。人とのつながりによって視野が広がり、自分のありたい姿が明確になることもあります」

 また、意外なことに「あの人ってズルイ」といったネガティブな感情も、本当の自分を知るきっかけになるとか。

 「SNSの投稿を見て、『あの人ばっかりズルイ……』と思うことは、本音では『いいな!』かもしれません。キラキラした投稿にモヤッとしたら潔く『いいね!』を押しちゃって、自分も同じことをすればいいんです。ネガティブな感情をポジティブな行動へ落とし込める転換グセを付けられると、生きるのがラクになりますよ」(藤井さん)

20代の今こそ、失敗することを怖がらないで

 キャリアをスタートしたばかりの20代は、とかく将来を不安に感じたり、焦ったりしがち。そんなときは思い悩むよりも、『とにかくやってみる』ことが現状打破につながります。

 「アメリカの心理学者、メグ・ジェイさんは『人生を決定づける出来事の80%は35歳までに起こる』『生涯賃金の伸びの3分の2はキャリアの最初の10年間に起こる』と言っています。だから、20代はとにかくやってみる。20代のたくさんの経験が無数の『点』となって、30代では『線』となります。失敗を恐れず、自分の引き出しを増やしましょう」

 しなやかに働き続けるには、しっかりとした軸と土台が必要です。20代は「ゆるぎない自分」を手に入れるための準備期間だと心得て、毎日を大切にしたいですね。

藤井佐和子(ふじいさわこ)
藤井佐和子(ふじいさわこ) キャリエーラ代表。大学卒業後、カメラメーカー、大手総合人材サービス企業にて、主に女性を対象とした転職支援チームを立ち上げ、数多くの転職を支援。2002年に独立し、現在まで延べ13000人以上の女性を対象としたキャリアカウンセリングを行う。その他、研修、講演、キャリアセミナー、執筆など幅広く活動。

取材・文/三浦香代子 写真/吉澤咲子 構成/加藤藍子(日経doors編集部)