「働く」ことで人生がより豊かになる

――自分にとって「働く」とは?

高橋 「お金を稼ぐこと」でもあるし、「生活をよくすること」でもあると思っています。だから、自分の生活や健康を犠牲にしながら働くのはイヤ。「人生がより豊かになる」働き方がしたいですね。

 日中は産婦人科医として働き、夜はボクシングの練習に励むという今の生活は理想的ですね。軸が2つあることで生活にメリハリがつく。プロボクサーとして練習や試合に本気で臨むからこそ、睡眠や食事、時間の使い方などに気を配る意識が生まれます。「医師の仕事だけ」にならずに、スイッチを切り替えられるのがいい。

橋本 私は「働く=精神面での豊かさを与えてくれるもの」だと思っています。社員のみんなが愛情を持ってプロダクトを広めてくれたり、ユーザーの方たちが喜んで使ってくれたりしているのを見ていると、とてもうれしいですし、豊かな気持ちになりますね。

正能 私も2人の考えはよく分かります。自分の「好きなこと」を通じて、「困っている人や社会」を幸せにできたら、その「お礼」としてお金をもらえる。それが私にとっての仕事であり、「働く」ということだと思っています。

未来の自分のために大切にしていること

――自分らしくいるために譲れない「マイルール」は?

橋本 常に「自分で決める」ことですね。「誰かに言われたから決めた」という気持ちでは、壁にぶつかったときに前に進めなくなる気がする。もちろん、道に迷ったときは、信頼している起業家の先輩などに相談はします。でも「自分で決めたこと」という納得感があることが大事。その先でうまくいかないことがあっても、不満を言う前に反省し、次の行動に移すことができるからです。

高橋 私は2つルールがあって、医療に関しては「これでいいと思ったことの20%上を行く」。これは研修医時代に、指導医から言われた言葉です。医療は失敗できないですから、「これで完璧」と思わないことが大切です。

 もう1つは、「失敗を失敗で終わらせない」。ボクシングを例に挙げると、私はプロデビュー1戦目と2戦目は負けてしまったんですね。メディアにも注目されていたのに、すごく悔しかった。でも、諦めずに戦い続けたら、3戦目で初勝利。失敗だ、なんて周囲が勝手にラベリングしてくる部分もあると思うんですよ。自分で自分を信じることをやめなければ、「敗北からの勝利」という逆転ストーリーにできる。究極的には、人生の最期に「楽しかった」と言えれば、私は全部「成功」だと思ってます。

正能 私は「自尊心」と「プライド」を勘違いしないようにすること。自尊心は「自分はこうありたい」っていう自分目線の気持ちで、プライドは「人からこう見られたい」っていう他者目線の気持ちだと私は解釈しています。

 SNSがはやっていると、いろいろなものを「どう見られるか」という意識で見るので、感覚がどうしてもプライドに寄りがちですよね。だから、意識的に自尊心を大事にするトレーニングをしています。例えば、お店でご飯を食べるときにも「これは本当に自分が食べたくて食べているのか。それともSNSにアップしたくて食べているのか」と真面目に考えたり(笑)。

橋本 他者目線で自分を飾ることが「自分磨き」と思われがちですが、本来は正能さんのトレーニングみたいに、未来の自分のために実践する日々の小さな努力が「自分磨き」なんじゃないかな。過程を人に見せつける必要はないものですよね。

高橋 そうそう。未来の可能性につながらない「自分磨き」をするくらいなら、みんな「歯磨き」したほうがいい。

正能橋本 歯磨き!?(笑)

高橋 「歯」の健康って、体全体の健康を保つことにつながっているから。他人ばかり気にして「成長しなきゃ」とか焦るより、自分の体を大事に(笑)!

「他人目線のプライドではなく、自分目線の自尊心を大切にしたい」(正能さん)
「他人目線のプライドではなく、自分目線の自尊心を大切にしたい」(正能さん)