恋愛にも結婚にも家族にも、人の数だけ形があります。固定概念やバイアスを振り払って、自分らしい生き方・在り方を探してみませんか? この連載では、さまざまな人が織りなす恋愛、結婚、家族の形をお届けします。初回は、飲食店の経営をしながらLGBTQの啓発活動を行っているトランスジェンダーの杉山文野さん(39歳)に話を聞きました。

(上)杉山文野 「30歳で死のう」葛藤を経て得たパートナー ←今回はここ
(下)杉山文野 「元女子高生」が、パパになった理由

杉山文野(すぎやま・ふみの)
杉山文野(すぎやま・ふみの)
1981年生まれ、トランスジェンダー。フェンシング元女子日本代表。早稲田大学大学院でセクシュアリティを中心に研究し、2006年『ダブルハッピネス』(講談社)を出版。卒業後はバックパッカーとして南極や世界約50カ国を巡り、一般企業勤務後に独立、飲食店経営をしながら講演活動などLGBTQの啓発活動を行う。日本初となる渋谷区・同性パートナーシップ条例制定にも関わり、渋谷区男女平等・多様性社会推進会議委員や東京レインボープライド共同代表理事を務める。著書に『元女子高生、パパになる』(文芸春秋)など
戸籍は女性、性自認は男性の杉山文野さんは、出生時に割り当てられた性と異なる性を自認しているトランスジェンダー。セーラー服を着ていた「元女子高生」で、現在は子育てに奮闘中の「パパ」でもあります。親友であるゲイの男性から精子提供を受け、体外受精によって、パートナーの女性との間に二人の子どもをもうけた杉山さん。上編では、パートナーとの出会いや、彼女のご両親に二人の関係を認めてもらうまでを聞きました。

元女子高生、39歳で2児のパパに

日経doors編集部(以下、――) 2018年11月に第1子、2020年12月に第2子が誕生されて、現在は二人のお子さんのパパとして奮闘されていますよね。思春期の頃から、いつかは子どもや家族をつくりたいと思っていたのですか?

杉山文野さん(以下、杉山) いえ、昔は自分が家族をつくるということは全く想像していませんでした。というより、できませんでした。