「もし私が裁判員に選ばれたらどうなる?」「仕事はどう調整した?」といった働く人の素朴な疑問にも答えます。「有罪とは? 無罪とは? どういうことなんだろう」……ライター・ニシブマリエが等身大に語ります。

酩酊状態の被害者が「目を開けた」ことが「合意」!?

 2019年に入ってから、 いくつかの性犯罪事件で無罪判決が出ました。3月18日に無罪とされた案件では、酩酊状態だった被害者が「何度か目を開けた」ことから合意があったと認定され無罪となり、同じく26日に無罪となった案件では、実の娘と性交した男性が「被害者は抵抗できない状態ではなかった」と無罪判決が言い渡されました。

 これらのニュースを見て、私は「やべえ国に住んでるな」と強い嫌悪感を抱きました。何度か目を開けることがセックスの合意になるなんて、本当にどうかしている。私はもちろん暴力を憎んでいるけれど、ただ、それらを担当した裁判長に「ミソジニー判決(ミソジニーとは、英語で『男性から女性への嫌悪あるいは憎悪』のこと)」と強い言葉を用いて抗議している人々に対しては、少し複雑な気持ちで眺めていました。

 なぜなら、私も裁判員として無罪判決を出したばかりだったから。

 私が担当したのは性犯罪の裁判ではありませんでしたが、裁判員の経験は「無罪とはなんだろう」と改めて考える契機となりました。今回は、2018年から2019年にかけて私が経験した裁判員の体験リポートをお届けします。