老後までに貯蓄ができるか不安…専門家に聞く

 それではdoors世代の貯蓄に関するありがちな不安や疑問を、専門家に聞いてみましょう。

Q.今後に備えて貯蓄をしなければと思っても、現状必要な出費がいろいろあって、貯蓄ができません。(27歳、教育・学習支援)
A.何かあったときのための「防災キット」的なお金をまず確保。

 doors世代のお金の専門家、横川楓さんは「貯蓄というとずっと先のためにお金をためるイメージがありますが、若い世代にまず必要なのは何かあったときのための『防災キット』的な流動性資産です」と言います。

 「いくら必要かは人によって基準は異なりますが、私は最低ラインとして収入の3カ月分は預金口座に置き、かつ備えとして20万円くらいが手元にあればいいと思います」

 手元のお金は急なご祝儀、入院やトラブル、災害が起きた場合などに備えて、現金で用意しておくのがよいのですが「つい使ってしまわないように工夫が必要です。実家暮らしの人なら親に預けてもいいでしょう。一人暮らしで家にいる時間が少ない人は、あえて家に置いておくというのも使ってしまわないための手です」(横川さん)

Q.老後までに3000万円を貯蓄する計画を立てていますが、自制して貯蓄ができるのか、不安に感じることがあります。(30歳、情報通信・IT)
A.「大きな金額をためよう」ではなく、収入の7~8割で暮らし、長期間で帳尻を合わせると考える。

 ファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さんは「どこかのタイミングで膨大な金額を貯めておくというよりは、長期間で帳尻を合わせていけばいいのだという感覚を得られると、安心できるかと思います」と言います。

 「例えば現在30歳の人が65歳まで働いて90歳まで生きる場合、あと35年働いて、残り25年は、働いて稼いだ期間で備えたお金を切り崩すことになります。老後の公的年金は、支給開始年齢が今より遅くなったり、金額が減ることはあるかもしれませんが、ある程度は出るでしょう。老後の公的年金が、現役時代の収入の半分もらえると仮定した場合、現役時代に収入の半分の半分(4分の1)を残しておいてそれを老後に回せば、ずっと収入の75%程度の支出が可能になります」

 下の図は、現役時代は収入の約4分の1を貯蓄しておき、その分を老後の公的年金に加算して収入としていくイメージを表しています。

 「公的年金の額が現役時代の収入の半分に満たないケースもありますが、現役時代よりもセカンドライフ(老後)のほうが消費額はやや減ることを考えれば、現役時代は収入の7~8割を使い、残りを将来によけておくことで、おおむね収入をならすことができると考えるのが現実的でしょう」

 ただし、現役時代に収入の満額を使ってしまう生活に慣れていると、難しいかもしれないそうです。

 「収入の“腹八分”しか使わずに生活するコントロール能力が身に付いている人であれば、人生全体で、微調整をしながら貯蓄を長持ちさせられるのではないかと考えます。もちろん、体力が残っているならば、長く働くことも有効です」(風呂内さん)