「学ぶなら海外で」「国内でまとまりたい(笑)」
荻上 全然オッケーじゃなくて、本当に苦労しました。現地の語学学校に行ってから大学院に行ったのですが、語学学校って英語が話せない子ばかりが通うので、仲良くはなっても英語力がそれほど上がるわけではなかったんです。大学院に入ると、当たり前ですが英語をしゃべれる人しかいませんでしたし、映画学科の生徒たちにはエゴイストが多くて当たりはきついし、勉強しないとやめさせられちゃうし。
でも、そんな中、手助けしてくれる子もいるんですよね。そんな子たちに頼りまくりました。大学院は3年で卒業しましたが、卒業制作が3年で終わらなかったり、卒業後、ちょっと現地で働いたりしていたので、合計6年間をアメリカで過ごしました。
アメリカの教育現場は「できないことをできるようになる」ために合理的に教えてくれるので、それまで文章を書いた経験もなかった私にとって、先生と一緒に学んでいたら「ちゃんと自分の脚本が出来上がっていた」というのが自信にもつながりましたね。
―― 初めての脚本が、英語だったのですね。
荻上 そこでとても大変な思いをしていたので、日本語で脚本を書く段になって、「なんて、自分の思い通りの表現ができるんだろう」と嬉しかったのを覚えています。
多部 荻上さんのお話、本当にすごいなと思います。私は旅行は好きなのですが、海外でお仕事をするということには興味が無くて。
荻上 外国の監督からオファーが来るかもしれませんよ(笑)。
多部 私は、国内でお仕事ができれば十分です。でも、荻上さんのような人生に対して羨ましいとも思います。思い起こせば、高校や大学の頃は「絶対に留学したい」と思っていましたし。大学には交換留学の制度もあったんです。ですが、仕事もあったので、現実的に考え、留学の選択肢は消えてしまいました。最近は、新しい世界へのチャレンジ精神がどんどん無くなっていて、安定の方向へ行ってしまっています(笑)。
―― ははは(笑)。そんな多部さんが、これから挑戦したいことを教えてください。
多部 プライベートの充実ですね!
荻上 応援しています!
脚本家 映画監督
女優
取材・文/小田舞子(日経doors編集部) 写真/稲垣純也 多部さんスタイリスト/轟木節子 多部さんヘアメイク/赤松絵利(ESPER) 荻上さんヘアメイク/笹浦麻記(emu)