グレタ・トゥーンベリさんの怒りのスピーチが話題になり、「サステナブル」や「エシカル」という言葉を目にすることも増えました。地球のために、未来のために一体何をすれば良いのだろう?という人にこそ見てほしい、カリフォルニア版「DASH村」のような映画のご紹介です。

 忙しい日常に疲れたとき「いつか都会を離れ、広い土地で野菜を作りたいな。大好きな犬を飼って……」と夢想したことがある、またはそんな暮らしに共感する人も少なくないのでは。けれど、夢は夢、と諦めて日常に帰るのがほとんどですよね。

 けれど、そんな「夢」どころか、カリフォルニアで東京ドーム17個分という広大な農地に暮らす生活をかなえたドキュメンタリー映画が、今回ご紹介する『ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方』です。

 鑑賞前、あらすじを読んで「体にいいものを食べたほうがいいのは分かるけど、無農薬野菜を買うコストだってバカにならないし、料理どころか、忙しい日はお弁当やお総菜を買ってプラごみが出る一方だよ!」と思った私。

 でも、この夫婦も、ロサンゼルスのアパートで私たちと同じように、無農薬野菜を作って食べることを夢見ながらも、農薬を使って作られた野菜をスーパーで買って料理をする生活をしていたのです。ある犬を飼うまでは。

 飼育放棄された犬を引き取り、トッドと名付けて飼うことにした二人。しかしトッドは夫婦の留守中、8時間ぶっ通しで吠え続け、アパートの大家から退去を命じられてしまいます。二人はトッドがのびのび暮らせる環境を考えるうちに、都会を出て、農場をつくれば万事が解決する! と思い付きます。でも、この時点で農場を開けるような土地も資金もない。

諦めない夫婦の行動力

 ここで諦めないのが二人のすごいところ。夢を実現するためにクラウドファンディングで資金を募り、広大な農地を手に入れます。何かを思いついても、すぐ「そんなお金や時間はないし」「仕事辞められないし」など理由をつけて、先延ばしにする私には信じられない行動力です。

 しかし、農業とは自分たちが作物を育てるだけでなく、自然の中に生きる虫や鳥や獣たちの影響も受けるということ。せっかく実った果物が害虫や野鳥に食われたり、お金になる卵を産む鶏がコヨーテに襲われたり。でも、ジョンたちは短絡的に駆除のために農薬を使うことなく、「共生」を目指します。

 結果、数年後には生物たちの食物連鎖が整い、害虫を食べる虫が農場に戻り、果物を収穫できるようになっていきます。この「問題にばかりフォーカスするのではなく、一旦引いて考える」という考え方には学ぶところが多いと感じました。

 害虫に農薬を使うように、うまく物事が回らない元凶を取り除くことを考えるのではなく、別の側面を見つけること。今見ている視点からばかりではなく、発想を転換すると問題解決の糸口が見えてくるかもしれません

 土や虫や花、動物たちが関係するように、私たち人間もそれぞれが相互作用して生きています。見方を変えたところですぐに状況が変わることは少ないかもしれません。でも、別の側面が見えれば、自分が納得できることも増えるはず。農業や自然に携わらずとも、俯瞰(ふかん)で物事を考えるやり方は非常に有用だと思いませんか?