あなたは、自分の記憶の正しさにどこまで自信がありますか? 古くからの友人や知人、家族と思い出話をしていて、話が食い違った経験はないでしょうか。あまりにもつらい記憶は心の奥底にしまい込まれ、いつしか自分に都合のいい「物語(Tale)」へと姿を変える――今回は、少女への性的虐待を描いた『ジェニーの記憶(原題:The Tale)』をご紹介します。

恋心だと思っていた記憶が違っていたとしたら

 ただでさえイラつきやすい思春期。一方的にルールを押しつけ、指図してくる親たちとは違い、話を聞いて気持ちを分かってくれる年上の人は「味方」だと思った。

 例えば、先生。いとこや、親戚、近所のお兄さん、お姉さん。とにかくカッコよくて聡明(そうめい)で、無条件に憧れた。それだけでなく、ほんのり恋心を抱いた……そんな経験はありませんか?

 Amazonプライムビデオでレンタル配信(2021年2月現在)されている映画『ジェニーの記憶』は、そんな少女時代の恋を、48歳になったジェニー(ローラ・ダーン)が思い出し、修正しながら真実を暴いていく物語。

 本作の監督と脚本はジェニファー・フォックス。主人公のジェニーは監督自身のことであり、彼女の実体験に基づいて描かれています。フィクションではあるものの、映画は冒頭「この物語は私の知る限り――事実である」というジェニーのセリフから始まります。