今回紹介するApple TV+のオリジナルシリーズ『ザ・モーニングショー』は、なかなか動きださない社会を刺激するかもしれない作品。朝の人気番組で活躍する大物男性キャスターによる女性部下へのセクハラ問題を取り扱い、セクハラのグレーゾーンを待ったなしで描きます。男性社会に立ち向かう女性たちがなんとも痛快なエンパワーメントドラマです。

旧態依然な社会にはうんざり!

 ここ数年で、ようやく新たな兆しを見せ始めたセクハラ問題ですが、被害を声にできずに悩む女性や、悪しき慣習を引き継ぐ企業がいまだに存在するなど、抜本的な問題はまだ解決されずにいます。

 日本では、ジャーナリストの伊藤詩織さんが、元TBSワシントン支局長の山口敬之氏から性行為を強要されたとする訴訟がありました。米国・ハリウッドでは、大物プロデューサーのハーベイ・ワインスタイン氏による数々のセクハラ事件が2017年10月に発覚。それを発端に巻き起こったMe Too運動など、ここ数年、数々のセクハラ問題が明るみに出てきました。しかし、これはまだほんの一部。いまだ多くの女性たちがセクハラ被害に悩み、声を上げられずにいます。

 その実情に食い込んだ作品が、Apple TV +のオリジナルシリーズ『ザ・モーニングショー』。大手ネットワークが放送する朝の報道番組を舞台に、視聴者から大人気の男性キャスター・ミッチがセクハラ問題で突如番組を解雇されるところからスタートします。

 ミッチのセクハラ解雇を受け、これまで番組を支えてきた共同キャスターのアレックス(ジェニファー・アニストン)、番組プロデューサー、報道局長、局の重役は突然の事態に大混乱。それぞれがあるべき姿を試されることになります。

 セクハラ問題の根本が、マスコミ業界の旧態依然とした体質にあることがよく分かる展開になっていますが、それはあまりにもリアルで、ドラマ批評家に「よく映像にできたな……」と言わせるほど。

 局の重役、報道局長、番組プロデューサーはみんな男性で、週末はもっぱらみんなでゴルフという、「フラタニティ」(米国の大学で男子学生の集まりをこう呼ぶ)状態。どう頑張ってもそこに入れない女性たちは、彼らの素行について見て見ぬふりを続け、彼らが望む女性像を演じ続けることでしか、のし上がれません。その中で成功を遂げたのが、共同キャスターのアレックスだったのです。