高めたい「メディアリテラシー」

 最初の感染者となった妻と継子を亡くしたミッチ(マット・デイモン)は、暴動が起きる中で冷静に「そんなことをしても無駄だ」と言ったり、他人を助けたり、悲しい顔でパニック状態の人々を見つめます。私は彼に、人間の理性と知性を見いだしたのですが、実は、ミッチはウイルスへの抗体を持つ数少ない人物であり、パニックの原因である「自分が感染し、死ぬかもしれない」恐怖からは逃れられています。

 蛇口をひねれば水が出てくるように、インフルエンザにはタミフルなどの治療薬、痛いときには鎮痛剤、高熱が出たら解熱剤。私たちの生活は、何かが起こっても対処できる方法があるのがほとんどです。それがあまりに当然で、とくに意識したことがないくらいでした。だから、対処法が分からないことが不安で、分かりやすい正解が欲しくてたまらないのです。

 今回、残念ながら、正解はまだ世界中のどこにもありません。今、私たちが簡単にできて、確実に効果があることは、ローレンス・フィッシュバーンが演じるチーヴァー博士の言う「握手せず、家にいて、手を頻繁に洗うこと」。荒廃する世界で、ミッチが平静を保っていられたように、恐怖や不安に支配されずに、自分の心の平和を保つこと。Twitterのタイムラインに流れてくる、リツイートされた情報を安易に信じるのではなく、科学的に根拠のあるデータや、情報の出どころが確かなものをきちんと併せて読むこと

 イベントや外出の自粛要請に始まり、緊急事態宣言の発令によって、今まで当たり前にしていたことを控えなければならない日々が続いています。終わりが見えない自粛は本当に気が滅入るし、先を思うと不安に押しつぶされそうになります。けれど、いつか必ずみんなで一緒に楽しい時間を過ごせることを信じて、今はきちんとご飯を食べて、よく寝て、外出したら顔を触らず、とにかく手を洗って過ごしましょう。STAY AT HOME,STAY STRONG.

文/榎本志津子 イラスト/六角橋ミカ