最近、#Me Too運動や、女性の人権について頻繁に耳にするようになりました。元号も平成から令和となり、⼤きく社会の流れが変わろうとしている今だからこそ考えたい問題を、実話に基づいて描いている映画のご紹介です。

パッドマン 5億人の女性を救った男

 1本目は『パッドマン 5億人の女性を救った男』。主人公のラクシュミは、妻のガヤトリが超大好き! いつだって一緒にいたい! 愛してるゥ! という、熱烈な愛妻家。2人は甘い新婚生活を送っているのですが、ある日、ラクシュミは妻が汚い布を生理の時に使っていると知り、大きなショックを受けます。市販ナプキンを買って妻に渡しても「こんな高価なもの使えない!」と激怒される始末。なら、安価なナプキンを作るしかない! と立ち上がるのですが、生理の話をすること自体がタブーなインドでは、多くの困難が待ち受けていて……という物語。

イラスト/六角橋ミカ
イラスト/六角橋ミカ

 劇中、生理中の女性は「穢(けが)れているから」という理由で、家の中に入るのも許されず、ベランダや屋外の小屋で生理が終わるまで過ごさなければいけないという描写があります。「ハァ? いつの時代の話?」とお思いになるでしょう。私も思いました。しかしこれは2001年のインドでの日常の風景。

 「生理中はお腹も腰も痛いし、眠いし、わけもなく落ち込んだり、イライラするっていうのに、外の硬いベンチで寝ろってどういうこと? しかも、雑巾以下の汚い布を使わなきゃいけないとか、なんの拷問? ありえない!」とひとしきり怒ったところで、ラクシュミだって母や妹と暮らしていながら、結婚するまでは女性の生理について知らなかったんだよな……と気づきました。

 つまり、女性がみんな、毎月の生理を「女の問題」として秘密にして、男性から見えないように隠してきたということ。また、男性は「穢れ」、「汚いこと」として目を背けてきたということ。ラクシュミは、愛する妻のことだから気づいたというだけなのです。

「パッドマン 5億人の女性を救った男」 (C)2018 CAPE OF GOOD FILMS LLP. All Rights Reserved.
「パッドマン 5億人の女性を救った男」 (C)2018 CAPE OF GOOD FILMS LLP. All Rights Reserved.

 たしかに、生理のことはパートナーや男性には言いにくいし、そのつらさは女性同士のほうが伝わりやすいかもしれません。

 でも、性格や思想、顔や体型と同じように、体質や体の機能だって大切なその人の一部です。私は、パートナーのことをきちんと分かりたいと思うし、私のことも知ってほしい。1秒でも長く一緒にいるために、お互いが健康でいたいし、そのためには相手の身体のことも理解したい。

 生理のことだって、男女関係なくもっとオープンに話し合えるようになって、対処法をお互いに認識できるようになれば、生理痛の時に、パートナー以外の男性が「大丈夫?」と心配して、お腹に当てるカイロや鎮痛剤を手渡してくれる日が来るのも、そう遠くないかもしれません。

 男性と女性で差異があるのは当然として、その「自分と違うもの」を持つ人に対して、自分の偏見を取り払い、できるだけきちんと知ろうとし、分からないことをどこまで想像し、思いやれるのか。何度打ちのめされても立ち上がり、奮闘するラクシュミを見て、そんなことを考えました。