海外のリアリティーショーと聞けば、ライバル同士の過激な罵り合いをイメージする人も少なくないのでは?しかし最近は出場者同士が互いに敬意を示し、多様性を受け入れ、戦いを心から楽しむ様子が描かれています。今回は、そんな新時代のリアリティーショーの代表格ともいえるNetflixの『ネクスト・イン・ファッション』を紹介します。

素晴らしいものに余計な味付けはいらない

 2020年5月に、リアリティーショー『テラスハウス』に出演中の木村花さんが逝去されました。生前、SNSでの誹謗(ひぼう)中傷に苦しんでいたという花さん。今、日本をはじめ世界中でリアリティーショーの在り方が問われています。

 筆者は職業柄、海外ドラマやリアリティーショーを数多く視聴・分析していますが、その中で、あることに気がつきました。それは、2018年ごろからそれらに変化が起きている、ということ。

 例えば、Netflixの大ヒット番組『クィア・アイ』。各分野のプロフェッショナルである「ファビュラスな5人組」、通称ファブ5が見た目も人生も自信のない依頼人をよみがえらせるリアリティーショーです。依頼人を突き放すのではなく、寄り添って心から改造していく、その様子がとても印象的でした。

 リアリティーショーはドラマチックな展開がないと盛り上がらないのかと言えば、答えはノーです。素晴らしいものに余計な味付けはいらない、と感じます。

 何かのプロである前に私たちは「人」です。人間らしく相手に敬意を示せる人たちの美しい姿に、驚くほど心が動かされるのです。

 そんな驚くほど心動かされる作品、Netflixで配信中の『ネクスト・イン・ファッション』を今回は紹介したいと思います。

 この作品は「実力があるデザイナーである」こと以外出場条件は問われない、世界を代表するトップファッションデザイナーが競うコンペティションリアリティーショー。実際に「出身国」「人種」「セクシュアリティ」「ジェンダー」「キャリアの長さ」など多様性に富んだメンバーが世界中から集められます。

 自分とは全く異なる人が集まり、同じテーマに向かって作品を生み出す中で、彼らにさまざまな化学反応が生まれていく過程がこの番組の最高に面白いところ。