2020年9月18日、米国連邦最高裁判所判事であるルース・ベイダー・ギンズバーグが87歳で亡くなりました。米史上2人目の女性最高裁判事だった彼女は、伝説的ラッパーの「ノトーリアスB.I.G.」にちなんで、彼女の名前の頭文字をとって「ノトーリアスRBG」と呼ばれ、若者にもポップアイコンとして親しまれていました。今回は、実話を基に、彼女の学生時代からキャリアの第一歩となる裁判までを描いた、映画『ビリーブ 未来への大逆転』をご紹介します。

あらゆる差別をなくそうと戦ったヒーロー

 ルース・ベイダー・ギンズバーグ。老若男女を問わず米国民から尊敬を集め、最高裁判事でありながら、その姿がデザインされたマグカップやTシャツが発売されるほど人気があった女性。彼女は生涯をかけて人種や性別、LGBTQなどに対するあらゆる差別をなくそうと戦った、いわばヒーローのような存在でした。

 社会問題を痛烈に批判するラッパーのように、不平等や不正義に対して冷静かつ的確に反対意見を述べる姿は多くの人に支持され、彼女が他界した際には、ヒラリー・クリントンやニコール・キッドマン、フローレンス・ピューなど、多くの人々が追悼のコメントを発表しました。

 本作の冒頭、うら若きルースがハーバード法科大学院に入学し、法律家としての道を歩み始めた1956年の世界は、男女は平等ではなく今よりもずっと女性が生きにくい時代でした。

 男子の同級生が500人以上なのに対して、女子は9人だけ。学内には女子トイレもありません。法科大学院を首席で卒業したにもかかわらず、女性であり、学生結婚をして幼い娘を持つ母親であり、ユダヤ系でもあったルースは、それを理由に12社もの弁護士事務所から不採用とされてしまいます。

 やむを得ず大学教授として働き始めますが、既に弁護士として働いている夫のマーティからある訴訟についての資料を手渡されます。

 それは、原告が男性であることを理由に、本来受けられるはずの控除を却下されたことへの訴訟でした。ルースは、この弁護を引き受けるために立ち上がります。性差によって判決内容が大きく違うことが当たり前だった時代に、男性の判事たちに性差別が存在していることを分からせるには、男性が不利益を被っている例を示そうという作戦です。果たして、勝ち目がゼロだといわれた裁判でのルースの戦いぶりは……?