約2年続いた当連載も、いよいよ最終回。偏見と差別に満ちあふれた社会で、何とか自分の力で生きるすべを見つけ、不死鳥のごとく再起した女性たちのドラマを、一気に3作品お届けします。今、生きづらさを感じる人に伝えたいメッセージを、筆者の経験と素晴らしき海外ドラマ作品を通してつづります。

「太っていても痩せていてもいい」美しさの定義は自分で決める

 結婚していてもしていなくても、子どもがいてもいなくても、バリキャリであってもそうでなくても、太っていても痩せていても、どちらが正しいということはありません。それなのに人はどうして「幸せ」の定義を自分の物差しで測り、それを他人に強要してしまうのでしょうか。すべては本人次第なのに、先入観であふれるこの社会に心底うんざりしてしまったことが何度もあります。

 筆者が特に嫌いなのが、「女性は痩せているほうがいい」思想。太っていても痩せていても、どちらが正負か決めようとすること自体が間違い。どちらも正なのです

 体形にかかわらず、結婚や子どもの有無などもそう。存在する人みんながさまざまなバックグラウンドを持っていて、それぞれに異なるドラマがあるのだから正解なんて決められない。頭では分かっていても、自分がマイノリティー側にいると、時に弱気になったり、社会の波にのまれそうになったりするのも事実です。そんな社会で、幸せになるにはどうしたらいいのか。ヒントとなるドラマをご紹介します。

『THIS IS US/ディス・イズ・アス 36歳、これから』

 一組の家族を過去と現在、そして未来の時間軸で描く大ヒットヒューマンドラマシリーズ。イケメンなのだけれど感情の起伏が激しい俳優のケヴィン(長男)、家族思いで、ビジネスで成功をおさめるしっかり者ランダル(弟)、体形がコンプレックスで自分に自信が持てないケイト(妹)。素晴らしい両親に育てられ、互いに愛し合っているのだけれど、関係がうまくいかない3人の兄妹の葛藤と絆がシリーズを通して描かれます。

 3人はそれぞれにコンプレックスやトラウマを抱えて大人になるのですが、今回はその中でもケイトに注目。

 彼女はずっと自分の体重を愛せずにいます。幼いころから、何をしても、どれだけ努力しても痩せない。家族は誰一人、太っているケイトをからかったりはしません。いつも優しく見守るだけ。しかしケイトは、周囲の誰もが「美しい」と称賛する、「母親の存在そのもの」がコンプレックスになってしまいます。問題は「痩せているほうがかっこいいと固定概念に苦しむケイト自身」にあったのでした。