今回紹介するのは、つまずきっぱなしの毎日をなんとか生き抜くアラサー女性が主人公のイギリスドラマ『Fleabag フリーバッグ』。フリーバッグと呼ばれる強烈なキャラクターの彼女が多くの人の心を掴むのは一体ナゼ? 海外ドラマ界で今一番注目される1作です。

「女性はお姫様」神話をぶっ壊せ!

 あなたは自分の人生を愛せていますか? 失敗なしにここまでやってきた人なんていないはず。たくさん傷つき、悲しんだからこそ、自分が歩んできた道を愛おしく思えるのではないでしょうか。

 今回ご紹介するドラマのタイトルである『Fleabag』は、「うす汚いもの、不潔なもの、安宿」という意味。驚くのは、主人公のニックネームがこの『フリーバッグ』なことです。

 口を開けば皮肉ばかりで、元カレとは馴れ合いの関係を継続中。ロンドンで経営するカフェは倒産寸前で、一夜限りの情事をこよなく愛す。彼女がフリーバッグと呼ばれるのは、この体たらくな暮らしぶりや歪んだ性格に起因するのかと思うのですが、視聴を続けるうちにそうではないと気が付きます。

 『女性はいつでもいい香りがして美しい』と思われがちだけれど、それは幻想。女性だって性欲に溺れそうなときがあるし、理性を保てないときもある。休日は夕方になっても顔さえ洗っていない日もあるし、笑顔を見せていても生理痛で倒れそうな日もある。主人公のフリーバッグは私たち自身で、Fleabagは『女性はお姫様』神話を信じる男性に向けた皮肉ではないかと私は思うのです。

 私たち女性は、自分の汚い部分を他人に晒すことをタブーとしてきました。一方で、主人公フリーバッグは融資担当の銀行員にお色気で迫ったり、乳がん検査で触診をする医師に「大丈夫です。むしろ気持ちいいです!」と口走ったり。

 はじめこそ、彼女の強烈さに驚きますが、男性や世間に遠慮することなく自由に振る舞う姿にやがて清々しさを覚えるように。そうそう、女性ってこんなもん。私たちの気持ちを代弁してくれているようで、スカッとします。