男性社会を飛び出し、米国で映画監督へ

聞き手:海外ドラマコラムニスト、伊藤ハルカ(以下:――) 皆さんは日本で活躍されたのちに渡米していますが、そのきっかけを教えてください。

監督・川出真理(以下:川出) 私は、日本で16年ほど2つの業界で働いていました。建築資材の営業をする仕事と、コンサートプロデューサー。それぞれ内容は異なりますが、女性としての働きにくさはいろいろと経験してきました。今回のドラマに出てくるようなシーンも、本当にたくさんありましたね。だからこそ作品を作っていて、あまりにもつらい思いをする和田ちゃんを見て、胸が痛かった。

―― 男性社会でバリバリ働いていたところから、米国で映画監督へ。大きなキャリアチェンジですね。

川出 実は、長い間、「映画を作りたい」「映画監督になりたい」という思いが胸にありましたが、40歳を目前に控えた39歳のときに、「どうしてもやりたい、しかもアメリカでやりたい!」と強く思ったんです。それまで、私は結婚もお断りしてきた。「その理由って何だっけ? 映画監督の夢をかなえたいからだ」と、改めて思って。だったら今、行くしかないなと決断しました。

―― 自らの夢を実現するために、思い切って人生の舞台を変えた。米国では男性社会から解放されたのでしょうか。

川出 『報道バズ』にもあるように、エンタメや報道業界の全てが男女平等社会かと言えば、そうではありません。しかし、米国ではジェンダー問題以上に、多様な宗教や人種が共存するがゆえに起きるトラブルがあります。そこでみんなが大切にしているのが、「会話をもつこと」

 日本には、「以心伝心」を大切にしている人が多いように思います。互いのことをすごく思い合っているし、言葉に出さない美がある。「言わなくても分かっている」ことを大切にする国民だと思うんですね。

 でも米国は正反対。言葉に出して、自分の思いを伝えていかなければ、誤解しか生まれません。ものすごくはっきりと、そして細かいやりとりをして進めなければならない国です。

 私は、日本の「以心伝心」文化は好きです。けれど、話をしないがための取り越し苦労だったり、気を回しすぎて疲れたりすることもあると思うんです。だから、もう少し会話を持ってみたら意外とすぐ解決する悩みもあるのではないかな?と思います。

―― 確かに。仕事でもプライベートでも、互いに「言わなくても分かるでしょ」が多いように思いますね。逆に「こんなことさえも言わないと分からないの?」と、分かってもらえないことにイライラしてしまう。宗教や人種が同じでも、違っても、所詮他人。互いに伝える努力をすることで、解決する問題は多そうですね。