女性として色々な生き方の選択肢があると気づいた

主演兼プロデューサー・本田真穂さん(以下:本田) 私は、日本でモデルの仕事をしながら俳優の仕事をしていました。でも、どのように演技力を磨けばいいのか、あまりつかめていなくて。そんなときに、米国へ語学留学に行く機会がありました。そこで、同じ日本人でもさまざまなキャリアを形成する女性たちに出会って、価値観が揺さぶられたんです。

―― 「さまざまなキャリアを形成する」とは、具体的にどのようなことでしょうか。

本田 当時、私は20代に入ったばかりで、「私もいつか結婚して子どもを産むのかな」なんて、将来について漠然と考えていた時期でした。でも、アメリカには、ずっとシングルでいて仕事を続ける人もいる。結婚の形も一つではないし、子どもも養子を受け入れるという考え方もある。女性としていろいろな生き方の選択肢があると気づいたんです。

 また、演技面について多くの学びを得ましたね。それまで私は「演技は感性」だと信じていたんです。だから、「私には感性がないから向いていないのかもしれない」と半ば諦めかけていたのですが、米国に来て、その考えは間違っていたんだと気づかされました。「演技は技術を磨けば上達できる」ものだと教えてもらったのです。

 私はモデルのキャリアが長かったからか、仕事でうまくいかなかったときには「もっとやせたらいいのかな」と自分の外見を批判していました。「パーフェクトな美の世界が絶対」という価値観に飲まれて、努力の矛先が間違っていたんだと思います。

 でも、俳優の世界は少し違っていたんです。スポットライトを浴びない人たちの人生を演じるのが俳優の仕事。その部分にすごく引かれましたね。それは同時に、「私はモデルが向いていない」と気づけた瞬間でもありました。

―― 芸能界にいなくとも、「美しくいなければ」と、ルッキズム思考にとらわれることがあります。「細くなければならない」「美人であればあるほど人生がうまくいく」など。決してそんなことはないのに、なかなかこの思考から抜け出せない……。

川出 それは誰しもあるのかもしれません。ただ米国でも、特にニューヨークに住む人たちは、「他人を体形や見た目、年齢で判断してはいけない」という共通認識を持っています

 大きな体つきをしている人に「太っている」なんて、その人の背景も知らずして言ったりしません。相手の気を引くために「今日かわいいね」なんてことも、言いません。

 ニューヨークでは、相手が他人であっても、良いと思うものに対して心から素直に「今日の髪形ステキだね」といった言葉が発せられることが少なくありません。それは良い点を相手に伝えたいという素直な気持ちからです。

 もちろん、誰にでも美の基準はあると思うので、心の中では感じていると思いますよ。ただ、「見た目で人を判断してはいけない」という認識があるので、口にも出さないようになっています。

 最近、50年前にアメリカで作られたコメディードラマを見たんですけれど、その時から「面接のときに年齢を聞くか聞かないか」といったシーンがあったんです。50年前ですよ。50年かけて米国では、年齢や体形、セクシュアリティーにおける差別をどうなくすかという議論をし、その積み上げが今につながっているのかな、と思いますね。

 日本はまだ少し時間がかかると思うけれど、そういう議論や意思表示を少しずつ積み上げていくといいのでは、と思いますね。