NYに出てきて、やっと成長できた気がした
脚本家・近藤司さん(以下:近藤) 私は、小さい頃から演劇がすごく好きでした。大学在学中に1年間休学して東京の大手養成事務所に所属し、俳優を志したことがありました。しかし、東京の芸能界のシステム自体、とてもじゃないけどよいとは思えなかったんですよね。
本田も話していましたが、技術を磨く場所だとは思えなくて。その時にぱっと頭に浮かんだのがニューヨークだったんです。
私自身ゲイであることを公言しているのですが、当時自分がゲイだということを知っている人が周囲に少なくて。日本で就職して、働きながら演劇を続けるにしても、そこで幸せになる自分を想像できませんでした。そんな時、LGBTQの権利運動が進んでいるように見えた米国にひかれました。
―― 確かにセクシュアリティーの観点でも、日本とアメリカでは大きな違いがありますね。日本では近年、大阪府で同性カップルの里親が国内で初めて認定されたことがニュースになっていました。それほど、日本とアメリカでは、LGBTQに関してスピード差があります。
近藤 『報道バズ』には、田村というゲイのキャラクターが登場します。でも撮影の半年ぐらい前まで、実は田村のキャラクターってゲイではありませんでした。
準備をしている中で、何かが足りないと思っていたんです。脚本監修をしていただいた佐藤大さんに相談したところ、「ゲイにしてみたらどうかな」と提案してもらって。
彼をゲイのキャラクターにするうえで、責任は感じました。自分の人生経験が反映されますから。自分の触れてほしくない部分や大切にしていた部分もすべて、反映できたな、と思います。
特に、5話で田村が「ニューヨークに出てきて、やっと成長できた気がします」と話すシーンがあるんですけれど、あれは私自身がニューヨークに来て、感じた思いがすごく表れています。
★【後半】「女性らしさ」を打ち破れ 異色のドラマ『報道バズ』 に続く
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取材・文/伊藤ハルカ イラスト/六角橋ミカ 写真/Derrrrruq!!!提供