今回、ご紹介するのは、ニューヨーク在住の日本人クリエイターチーム「Derrrrruq!!!(デルック)」が制作する海外ドラマ『報道バズ』。日本を飛び出し、アメリカで活躍する「Derrrrruq!!!」の皆さんに話を聞きました。前後編でお届けします。

【前編】ドラマ『報道バズ』 日本を飛び出たクリエイターの決意
【後編】「女性らしさ」を打ち破れ 異色のドラマ『報道バズ』←今回はここ

 低予算のインディーズ作品ながら、忖度(そんたく)なしで日本のメディア業界を赤裸々に描く。そんな姿勢が、批評家の間で今話題になっている海外ドラマ『報道バズ』。

 舞台はニューヨーク。日本からアメリカに飛び立った女性アナウンサーの和田明日佳が、ネット上で多くのバッシングを受けながらも、新天地で前向きに戦っていくストーリーです。ミソジニー(女性嫌悪)にLGBTQ(性的少数者)問題、ネット上での誹謗(ひぼう)中傷やルッキズム(容姿による差別)など、「報道業界」を通じて、日本の、そして世界の社会問題にまで切り込んでいます。

 どのような思いをもってこの作品を制作したのか。日本を飛び出し、アメリカで活躍する「Derrrrruq!!!」の川出真理(監督兼プロデューサー)さん、本田真穂(主役俳優兼プロデューサー)さん、近藤司(脚本家兼プロデューサー)さんの3人に、ストーリーについて話を伺いました。

◆クリエイターチーム「Derrrrruq!!!」
ニューヨークで活動する、脚本家・近藤司、俳優・本⽥真穂、監督・ 川出真理からなるクリエイターチーム。海外でマイノリティーとして ⽣きるなかで培った客観の⽬を⽣かして、「男らしさ」「⼥らしさ」「⽇本⼈らしさ」「年相応」などといった固定観念と戦うキャラクターが登場する映像作品を制作している。「デルック」という名前は「出る杭(くい)は打たれる」の「出る杭」にちなんでつけられた。

今を生きる女性たちのリアルな嘆きを反映

聞き手:海外ドラマコラムニスト、伊藤ハルカ(以下:――) 日本の報道業界のリアル、働く女性に向けられる偏見に真っ向から勝負を挑むストーリーが印象的でした。脚本を書き始めてからこれまでの6年間、米国ではMe too運動やブラック・ライブズ・マター運動など、さまざまなことが起こりましたよね。

脚本家・近藤司さん(以下:近藤) 私自身も、この6年間で価値観をアップデートしていきました。川出や本田から聞いたエピソードで、特に印象的だったものがあります。それは「女性であることが楽だと思っている」男性がいるということ。

 でも、女性たちは、そのような差別的な言葉を投げかけられることは日常茶飯事で、傷つく言葉をぶつけられることに驚きはない。それって、程度が違えど、日ごろから多くの誹謗中傷を女性が受けているということですよね。私自身はこのような体験をしたことがないので、衝撃を受けると同時に、今を生きる女性たちのリアルな嘆きとしてストーリーにも反映しなければと思いました。