今、あなたには好きな人がいますか? 好きな人が今のパートナーだという人、どうにかして好きな人との恋を実らせたい片思い中の人、仕事が忙しくて恋なんかしていられない人、あまりにも大昔過ぎて「こんなこともあった、かもしれない……」と、記憶をたどる人(私です)。鑑賞後、どんな人も「愛」について考えてしまう作品をご紹介します。

『愛がなんだ』

 1本目はタイトルもそのものずばり、『愛がなんだ』。岸井ゆきのが演じるテルコは、マモル(成田凌)が大好き。自分勝手で、テルコのことを都合のいい女として扱うマモルは、テルコの親友、葉子が「あんな男、やめときなよ」と何度も忠告するほどのダメ男。けれど、そんな葉子にも何でも言うことを聞く都合のいい男、ナカハラがいる。やがて、マモルが片思いをする個性的な年上女性、すみれが現れて……という物語。

 とにかくイタい。テルコが、マモルが、ナカハラが。相手に夢中になりすぎて、空回りしている様子が非常にリアルに描かれるので、鑑賞中、変な叫び声を上げながら転げ回りたくなるくらい、イタい。劇中で描かれるエピソードは片思いのあるあるがギュウギュウに詰まっていて、心がざわざわします。

 自分のすべてをなげうって献身的に尽くすのは、はたして愛なのか。確かに恋愛中にはそういう感情が生まれるもの。しかし、ふとした拍子に見せるマモルの迷惑そうな顔や、いら立ちを見なかったことにして、一方的に過剰に尽くすテルコは、もはや恋をしているというよりも、マモルをむやみに信仰し、崇拝しているかのようです。

 もちろん、神様ではない、ごく普通のさえないアラサー男子のマモルが、テルコに慈悲を垂れることは無いでしょう。それでも、「現実のマモル」ではなく「マモルを好きなこと」に夢中なテルコは、報われないように見えて、案外幸せなのかもしれません。

 劇中の「愛って、なんなんスかね?」というナカハラの問いに、「本当に、なんなんだろうね……」と考えこんでしまったけれど、「私は、自分が何を考え、感じているのか、どういう人間なのかを知ってほしいし、相手のこともきちんと見て、知りたいと思う。相手に嫌われるかもしれない恐怖を抱きながらも、そこから生まれる対話やコミュニケーションを大切に思っているよ、ナカハラ君」と答えようと思います。答えになっているかは分からないけれど。