せつない恋愛模様やその人生についてなど、LGBTQ(性的マイノリティー)の人々を描いた作品は数多くありますが、今回は米国の「同性愛矯正施設」を舞台にした、みずみずしい10代の青春映画『ミスエデュケーション』をご紹介します。

いまだ続くLGBTQに対する差別や偏見の発言

 2020年9月、足立区の定例会議において、ある区議会議員が「同性愛が広がったら、足立区は滅びる」と発言したことが物議を醸しました。区議会議員のこの差別的発言に対し、当事者であるLGBTQの人々が「#私たちはここにいる」と、パートナーとの写真を次々にSNSに投稿し、ひとつのムーブメントが起こったことをご存じの方も多いかもしれません。

 現在、LGBTQへの差別はなくすべきだという認識が広く浸透してきているように思います。けれども、前述の足立区議の発言以外にも、2018年にはある衆院議員が「LGBTには生産性がない」という記事を寄稿。批判が殺到し、掲載した月刊誌は休刊となりました。2019年には茨城県でのLGBTQ支援の検討会において、県医師会の副会長が「性的マイノリティーがマジョリティーに戻る治療はないのか」と発言しています。このように、ここ数年のニュースからでも、いまだに差別や偏見があり、同性愛は矯正しうると考えている人が少なからず存在することが分かります。

 映画『ミスエデュケーション』は、1990年代半ばのアメリカが舞台。彼氏とプロムパーティーに参加していたキャメロン(クロエ・グレース・モレッツ)が、真の恋人で同性のコリーといちゃついているところを目撃され、唯一の肉親である叔母に密告されてしまう。敬虔(けいけん)なキリスト教福音派である叔母は、「同性愛は罪であり、病気である」という福音派の考えのもと、キャメロンを 「神の約束」という、同性愛を正すための矯正施設に送りこむ――という物語です。

 「神の約束」は寮制で、10~15人程度のティーンエージャーが共同生活を送る、ログハウスのような施設。入ると同時に矯正プログラムにそぐわない私物は没収され、細かい規則を言い渡されます。普通の学科は自習形式で行われ、メインは依存症克服のような、他者の前で自分の弱さを告白する形式のセラピー。同性愛を、薬物やアルコール依存症などの行き過ぎた嗜好や欲と同じものととらえて、そうなった原因を自ら探り、書き出すように言われます。そして「同性愛は悪であり、同性愛者である限り、自分の存在そのものが罪である」と毎日言われ続け、 「矯正」という名の洗脳をされるのです。実は、この「神の約束」のような同性愛矯正施設はフィクションではありません。