「家族総幸福」を求めて

 その後、フィジーで知り合った日本人の妻と結婚、第1子が誕生します。そして移住から10年がたった頃、フィジー・日本の「デュアルライフ」に新たな展開が欲しくなり、別の国への移住を検討し始めます。しかし、その直後に妻がフィジーでドライフルーツの会社を起業。妻が楽しそうに仕事をしている姿を見て、フィジーからの撤退計画は一旦保留にしました。

 それから第2子も生まれ、家族4人での生活がスタートしました。ブータン政府が掲げる「国民総幸福」(GNH: Gross National Happiness)という発想に感銘を受けた私は、それをもじった「家族総幸福」(GFH: Gross Family Happiness、筆者の造語)という考え方をするようになりました。

 私は、自分や家族の誰かだけが幸せになるのではなく、「家族みんなが幸せ」という状態を理想としています。親は「子どものためなら」と犠牲をいとわない姿勢になりがちですが、それだと幸福の持続可能性が下がります。だから、家族みんなが幸せでいる「家族総幸福」を目指しているんです。

 このGFHを人生の道しるべとして日々生活していく中で、新しいアイデアが降臨しました。フィジー・日本に加えて、3つ目の拠点を持つことで、刺激と安定をより良いバランスにし、さらに多様性を帯びた育児が実現できるのではないだろうか。そう考えたのです。

 フィジーとも日本とも違う「幸せ」を学べる国はどこかと考えた結果、世界一周のときにも訪問して好印象を持っていた「デンマーク」を3番目の拠点先に決めました。

 世界3拠点生活を実践するにあたっては、お金や仕事のこと、子どもの学校など、課題はいくつもありました。ただ、子どもが大きくなっていくとより動きにくくなるだろうし、親の介護なども発生するかもしれない。「今が一番動きやすいはず」と妻と話し合い、トリプルライフにかじを切ったのです。

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