フィジーで英語学校の校長を務める筆者は「日本・フィジー・デンマーク」の世界3拠点生活(トリプルライフ)を実践しています。現在は新型コロナウイルスの影響により、フィジーにとどまっています。この連載は今回が最終回です。最後に「やりたいことがない」ことは武器になるという話をしたいと思います。私自身も学生時代、「やりたいこと」がありませんでした。だからこそ、世界一周にチャレンジできた経験を元に、「自分が本当にやりたいこと」を見つける方法をお伝えしたいと思います。

「将来なりたいものがなかった」学生時代

 小学校や中学校の卒業文集では、卒業生全員が「将来何になりたいか」を書くところがありました。私はそれが嫌いでした。「特に何もなりたいものがありません」と書くと、先生から「何でもいいから書いてみて」と指導が入ります……。なので、当時の定番だった「プロ野球選手になりたいです!」と書きました。なりたいどころか、逆に、激しい競争社会だから絶対に嫌なのに……。

 ドリームハラスメント(ドリハラ)という言葉をご存じでしょうか? 大人たちがよかれと思って「夢を持つべし」と若者たちに助言しますが、彼らは「夢を持たなければならない」というプレッシャーに苦しむことがあります。私がそうでした。私は学生時代、「やりたいことがない」ということに罪悪感を持って生きていました。

とある友人「世界一周したい」

 大学を卒業して社会人になっても、特にやりたいことに出合いませんでした。社会人3年目、たまに考えるベタな質問「宝クジで1億円が当たったら何をしたいか?」を男友達と話していたとき、彼が「まずは絶対に世界一周だろ」と言いました。

 私自身は彼ほどの熱量で「世界一周に行きたい!」と思ったわけではありません。「強いていえば行きたいかもな……」くらい。ただ、私がやりたいことは世界一周以外に何も出てきませんでした

 私のような「やりたいことがない」人間にとって、少しでも「やりたい」と思えることはとても貴重です。私はその小さな芽を大切にしようと思いました。

 世界一周にかかる費用を調べ、宝クジなんかに当たらなくても行けることを知ります。そして、世界を一周しました。

エクアドルの赤道記念碑「ミッター・デル・ムンド」で逆立ちをする筆者
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