副業のきっかけは「危機感」

 その「危機感」とは、キャリアアドバイザーとして、働く人の生の声に向き合う時間がなくなったことで、新しい部署で自身のつくるサービスが、ユーザーとなる個人の実感とかけ離れていってしまうのではないか、というものでした。

 折しも、黒河さんが異動したのは2020年1月。やがて新型コロナウイルスの流行が始まり、働き方や世の中の価値観がその影響を大きく受ける中で、「コロナ禍以前のキャリアアドバイザー経験で得た知見は、ウィズコロナまたはアフターコロナの時代に、どれだけ応用できるものなのだろうか」と不安に感じたそうです。

「休眠」中のスキルを活用

 そこで考えたのが、異動によっていわば「休眠資産」になっていたキャリアカウンセリングの専門スキルを、副業で生かすという選択でした。「経験値が足りない」「自分の中の引き出しが不足している」と感じたときの打開策は、ここでも「職場以外の場所やつながり」に目を向けてみることだったのです。

 「キャリアアドバイザー時代は、転職検討者の終業後や土曜日にカウンセリングの予約が入ることも多く、どちらかというと夜型の生活でした。しかし、部署異動後は平日9時~19時ごろが平均的な就業時間に。リモートワークが導入されてさらに時間の余裕が生まれました。また、本業が企画職になったので、副業でキャリアカウンセリングをして会社に迷惑をかけないかという心理的抵抗感もなくなりました

 環境が整い、SNSや人づてで仕事を探した結果、巡り合ったのが、現在副業で関わっているサービス「ミートキャリア」でした。20年6月から副業のキャリアカウンセラーとして登録。黒河さんの副業を成功させるコツは、(下)編でお伝えします。

取材・文/加藤藍子(日経doors編集部)