自分の言いたいことが伝わらない、相手の言いたいことがはっきりしない――。そんなとき、言葉にならない気持ちやアイデアを拾い上げ、対話を見える化する「グラフィックファシリテーション」を取り入れてみてはいかがでしょうか。

グラフィックファシリテーションとは?

 言葉は、人によって捉え方や意味合いが異なるときもあります。例えば以下のようなシーン。

Aさん 「イノベーションって大切ですよね!」
Bさん 「はい、やっぱりイノベーションですよね」

 果たして、二人の考えている「イノベーション」は同じものでしょうか? 共通の考えのもとに会話をしているように思っていても、違った認識のまま話が進んでいることも。

 ここで、それぞれの「イノベーション」を絵にしてみるとどうでしょう? 「それぞれが考えるイノベーション」が共有でき、さらに自ら絵に描くと、自分事として捉えることができる。これが「グラフィックファシリテーション」です。

 言葉では伝えきれない思いなどを、絵や文字を使って表現するコミュニケーション手法「グラフィックファシリテーション」は、仕事をはじめさまざまな対話に使えます。今回は、しごと総合研究所の代表、山田夏子さんに話を聞きました。

グラフィックレコーディングとグラフィックファシリテーション 違いは?

 「グラフィックファシリテーション」とは、グラフィックレコーディングとファシリテーションの要素を合わせたもの、との考えもありますが、グラフィックファシリテーターの山田さんによると、以下のような違いがあるそう。

◆グラフィックレコーディング…絵の議事録として、話し合いの内容を分かりやすく残したもの。話された言葉をまとめた「記録物」が成果。

◆グラフィックファシリテーション…会議、話し合いの質を向上させるもの。まだ共有されていないものや言語化できないものまで含む「話し合いそのもの」が成果。

 グラフィックファシリテーションで描き上がったグラフィックが議事録の役割も果たすことはありますが、あくまでもそれはおまけ的な部分。本質はファシリテーションにあります。

絵が苦手でも問題ない?

 絵が苦手でもグラフィックファシリテーションはできるのかと、山田さんに質問してみると、「問題ありません」と即答。理由を尋ねると、「グラフィックファシリテーションの成果物は絵ではないから」

 アウトプットを気にして、きれいに描こうとする必要はありません。イラストやアイコンではなく、線や点といった抽象的なものでもOK。絵を通した見えない部分の共有が重要なのです。