近年注目されつつある地方移住。生まれ育った場所に戻る人もいれば、縁もゆかりもない場所に行く人も。「都会より生活費が安い」「のんびり過ごせる」といった声も聞きますが、果たしてその実態は? 今回は「地方移住を体験したのち、東京に戻る選択をした」女性に話を聞きました。
移住を決意したのは「東京に疲れた」
SMS配信などを通じて企業や社会のスマート化を推進する、AI CROSS経営企画室・広報の小野茜さん(39歳)。東京・丸の内で働いていた彼女が移住したのは、宮崎県児湯郡(こゆぐん)新富町。東京での仕事もしつつ、宮崎で暮らす二拠点生活を2018年にスタートさせました。
東京での会社員時代は、「好きで働いていたものの、多くの仕事を抱えていた」という小野さん。その後2017年に退職し、フリーランスの広報に転向します。
「当時は夢中で走っていたのであまり気づかなかったのですが、辞めたときに、精神的にも肉体的にも時間的にも余裕がないことが分かりました。それらを俯瞰(ふかん)し、総体的に見たときに、『東京に疲れたな』と思ってしまったんです」
宮崎には縁もゆかりもなかったそう。前職時代、地方創生関係を担当していたため、他社の地方創生事業担当の人に「一緒に宮崎へ視察に行きませんか」と誘われ、1度だけ訪れたのが宮崎県でした。
視察の夜に地元の方との交流会で紹介されたのが、後に宮崎との縁を作ってくれた人。退職直後にたまたまイベントで再会し、『宮崎で仕事をしない?』と誘われたことをきっかけに、真剣に移住を考えるように。
その仕事内容とは、地元の商社での広報の立ち上げ。前職の経験を十分に生かせると思った小野さんは、誘われてから2回ほど宮崎に行き、2回目には住むマンションも契約してすぐに移住します。
ただ、フリーランスの広報としても働いていた小野さん。東京でしかできない仕事が多くありました。そこで東京で借りていたマンションは一旦解約し、関東にある実家に拠点を置くことに。そこと宮崎との「二拠点生活」をスタート。人生の大きな転機の一つを迎えることになりました。
地方移住を経験後、東京に戻ることを選択
およそ3年間の二拠点生活を満喫していた小野さん。しかし、2020年の12月に宮崎での生活を解消。生活の拠点を東京に戻すことに。なぜだったのでしょうか。
「一つは、東京の仕事が拡大して多忙になり、宮崎にいられる時間が作れなかったこと。2つ目は、私には東京での仕事のほうが楽しいと感じたことでした。スピード感や規模感、仕事に対してのスタンスや考え方、描くビジョンなど、当然かもしれませんが大きな違いがあります。良しあしではなく、私は東京がいい、という判断を下したことも事実です」
ただ、「落ち着いたら、また戻ることも考えている」と小野さん。「地方移住に興味があるなら、どんどんチャレンジしたほうがいいと思います。失うものより、得られるもののほうが多いはずですよ」
次のページからは、小野さんが移住で感じた「メリット」「デメリット」と、これから移住を考えている人へのアドバイスを紹介します。