自己肯定感を消耗しない読み方

 ビジネス書というと、成功した人が「こういうふうにしたら成功できた」「変わりたいならこうしなさい」などと書いているイメージも強いもの。「私と著者とでは能力も環境も違うから、参考にならない」――。そんな後ろ向きな感情とはどう付き合えばよいのでしょうか。はあちゅうさんは「諦めるために読書をするくらいなら、他のことをしたほうがいい」と断言します。

 「そういう読書姿勢でいると、誰が書いたどんな本を読んでも、言い訳を探してしまうんじゃないかな」

 著者は、自分よりも恵まれた境遇にいるように思えるかもしれない。性格が正反対で、自分の中からは絶対に生まれてこないような言葉が、そこには書かれているかもしれない。でも「だからこそインスピレーションを得られる」と語ります。

 「自分と違う人生を送っている人の体験談から、生かせるポイントを探すんです。知らなかった言葉や表現に出合えることも、楽しみの一つじゃないですか。著者のやり方をそのままマネできなくたっていい。たぎるような情熱とか、ほとばしる感情とか、文章から湧き上がってくるエネルギー自体から、やる気を注入してもらえることもありますよね」

 本で出合った印象的な言葉をいつでも読み返せるよう、お気に入りの付箋で印を付けることを習慣にしているそう。さらに、大切だと思えるフレーズは読書用のノートに書き留めておくことも。

 「『読書ノート』は中学生の頃から続けています。英語の単語や数学の公式を、ノートにひたすら書いて記憶するように、『自分に刻んでおきたい言葉』は書いて染み込ませていくんです

愛読書には、付箋がびっしり。「気分を上げるために、こだわってかわいいものを選んでいます」(はあちゅうさん)
愛読書には、付箋がびっしり。「気分を上げるために、こだわってかわいいものを選んでいます」(はあちゅうさん)

お薦めの1冊は「BIG MAGIC」

 はあちゅうさんが薦める1冊は、「BIG MAGIC」。著者のエリザベス・ギルバートさんは、代表作「食べて、祈って、恋をして」で知られる作家です。2010年にはジュリア・ロバーツ主演で映画化もされているので「知ってる!」という人もいるかもしれません。はあちゅうさんも、もともとこの映画作品のファンだったことがきっかけで、本を手に取ったといいます。

 同書のメッセージは、「充実した人生を送りたければ、どんなときも創造的でいよう」ということ。小説家である著者や、その知人の実話などを通し、「創造的に生きる」ためのヒントを教えてくれます。

 会社員でも「個人」の価値を高めていくことが求められる今、「発信すること」が必要になるのはクリエーターだけではありません。

 「発信する人が直面する不安や恐れに対する答えがすべて書いてある。これを日々の発信のお供にしてもらえたら、ちょっと強くなれると思います」

「BIG MAGIC 『夢中になる』ことからはじめよう。」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
「BIG MAGIC 『夢中になる』ことからはじめよう。」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
はあちゅうさんの読書術
●著者とゆっくり対話するイメージで。速読術は使わない
●「諦めるため」「言い訳をするため」の読書はしない
●「自分に刻んでおきたい言葉」があれば、書くことで染み込ませる

取材・文/加藤藍子(日経doors編集部) 写真/清水知恵子

はあちゅう
ブロガー・作家
はあちゅう 「ネット時代の新たな作家」をスローガンに、読者と直接つながって言葉を届ける未来の作家の形を摸索中。著作に「とにかくウツなOLの、人生を変える1か月」「半径5メートルの野望」「通りすがりのあなた」など。