「内容がひとことで言えるような本はあまり読まない」

 「月に10冊以上は本を読む」という高橋さん。なかには「宇宙の扉をノックする」(NHK出版)など全600ページ以上に及ぶ本も含まれているため、かなりの読書量です。

 高橋さんが本を読む理由は

●自分の知識と視野を広げられる

●本を読むことで、自分の考えをはっきりとつかめる。自分の考えを客観視できる

●本を読んで自分の意見が変わることもあるが、その場合はより洗練され、確信力のあるものに変わっていく

 の3つです。

 「だから、読む前から何が書いてあるか予想できるような、手軽なノウハウ本の類いはあまり読まないですね。常に自分の中に『問い』を立てたいので、本の内容が問いに結び付かないような本は読まなくてもいいかも」

 そして、「本を読むだけ」ではなく、「実際に行動を起こす」ことで、知識を体得します。本を読みながら気になった部分には付箋を貼り、「どういった行動を起こせるか」をメモ。漠然と「こういうことが大切なんだな」と思うだけではなく、「明日、○○をする」と具体的な行動に落とし込んでメモするそうです。

 「いくら本を読んでも、実際に行動を起こさないと考え方は変わりません。メモはCaptioというタスク管理のアプリを使い、メモの内容が自分にメールで届くようにしています

マイブームは「ペア読書」

 さらに高橋さんが今年になってからはまっているのが、「ペア読書」。ペアを組み、同じ本を30分間読み、その後30分間議論するという読書術です。

 「本からインプットした内容を、議論でアウトプットすることで、より深く理解できるし、記憶に残りやすくなります。自分一人では読まないような本にトライすることもできます。人数はペアに限らず、5~6人でもいいのでは。ただ、『同じ本に興味を持ち』、『日ごろから親しい人たち』と『予定を合わせる』のが難しく、相手探しが大変なのですが……」

 ペア読書の相手が「日ごろから親しい人たち」のほうがいいのは、それほど親しくない人だと「こんな意見を言ったら驚かれるかも」と遠慮してしまうからだとか。本を読み、とことんディスカッションすることがペア読書の醍醐味なんですね。

「時間を見つけて読書会にも参加します」(高橋さん)
「時間を見つけて読書会にも参加します」(高橋さん)

お薦めの1冊は「ゼロ・トゥ・ワン」

 最後にdoors世代の読者にお薦めの1冊を聞くと、「ゼロ・トゥ・ワン」(ピーター・ティール著/NHK出版)を挙げてくれました。

 高橋さんがこの本を手に取ったきっかけは友人の間で話題になっていたことと、PayPalの創業者であり、起業家・投資家として注目を集めるピーター・ティールが書いた本だったこと。本の中でピーター・ティールは「新しい何かを創造する企業をどう立ち上げるか」をテーマに、「既にあるものをコピーするのではなく、ゼロから1を生み出すべき」「同業他社と競争するのではなく、独占企業(オンリーワン)になることの重要性」を説いています。

 「私も起業しているからこそ、共感できた部分がたくさんありました。これから自分のテーマを追究したい人、ゆくゆくは起業したい人にとっては勇気をもらえる1冊だと思います」

 高橋さんにとってはビジネス書やノンフィクションなどは、読むことで知識を得る「手段のための読書」、小説などは読むこと自体が楽しい「目的のための読書」だといいます。読書家の高橋さんからお薦めの1冊、ぜひ読んでみてください。

「ゼロ・トゥ・ワン」(ピーター・ティール著/NHK出版)
「ゼロ・トゥ・ワン」(ピーター・ティール著/NHK出版)
高橋祥子さんの読書術
●自分の中の「問い」を大切に。それと結び付く本を読む
●本を読んだら「行動を起こす」ことで、知識を体得。タスク管理アプリも活用
●おすすめは「ペア読書」。インプットした内容を誰かとアウトプットし合うと理解が深まる

取材・文/三浦香代子 写真/清水知恵子 構成/加藤藍子(日経doors編集部)

高橋祥子(たかはししょうこ)
ジーンクエスト代表取締役/ユーグレナ執行役員
高橋祥子(たかはししょうこ) 大阪府出身。京都大学農学部卒業。2013年6月、東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程在籍中にジーンクエストを起業。2015年3月に博士課程修了。個人向けに疾患リスクや体質などに関する遺伝子情報を伝えるゲノム解析サービスを行う。2018年4月、ユーグレナの執行役員に就任。