「私はこうして成功した」「人生が変わる○○」――。ビジネス書の表紙には、すぐにでも自分を変えてくれそうな言葉たちが並んでいます。でも、読んだ結果「変われた?」と問われると自信がない。キラキラした言葉に振り回されるだけで終わらない、意味のある「読書」をするにはどうしたらいいのでしょうか。この連載では、起業家やインフルエンサーの皆さんに、「とっておきの読み方」を伝授してもらいます。第2回は、ジーンクエスト代表の高橋祥子さんに聞きました。

経営に不可欠なのは「問い」を立て続けること

 東京大学大学院在学中に起業し、ジーンクエスト代表取締役となった高橋祥子さん。遺伝子情報を解析し、病気や体質などの健康チェックができる個人向けサービスを提供しています。多忙な毎日を送る高橋さんですが、週末は書店に足を運ぶことを楽しみにしているそう。

 「リアル書店にはセレンディピティ(予想外の発見)があって楽しい。インターネットでもよく本を買いますが、ネット書店だとお薦め本機能で私が好きそうな本ばかり表示されるので、意外性がないんです」

 最近手に取ったのは百人一首の解説本。理系のイメージが強い高橋さんのチョイスとしては、少し意外ですが──。

 「以前、『センスメイキング』(プレジデント社)を読んだ時、本の帯に『科学よりも人文科学が大事だ』という意味のことが書いてあったんですね。私からすると『科学のほうが大事だ』だと思うのですが、一方で企業経営にはアート的な感覚も必要だと実感しています。企業経営は『○○をやり遂げたい』という熱い思いで起業し、経営は『なぜ?』『次はどうする?』と自ら考え、問いを立てることの連続です。現状に満足して『これでいい』と思うと、思考停止してしまう」

 「その問いを立てるにはロジックだけでなく、アート的な感覚が必要となります。そんなことを考えながら歩いていたら百人一首の解説本が目に留まり、古代の日本人の感性に触れることができました。リアル書店に行かなければ出合えなかった1冊です」

週末は書店に足を運んで「予想外の発見」を楽しんでいるという高橋さん
週末は書店に足を運んで「予想外の発見」を楽しんでいるという高橋さん