「私はこうして成功した」「人生が変わる○○」――。ビジネス書の表紙には、すぐにでも自分を変えてくれそうな言葉たちが並んでいます。でも、読んだ結果「変われた?」と問われると自信がない。キラキラした言葉に振り回されるだけで終わらない、意味のある「読書」をするにはどうしたらいいのでしょうか。この連載では、起業家やインフルエンサーの皆さんに、「とっておきの読み方」を伝授してもらいます。第3回は、シェアリングエコノミー伝道師の石山アンジュさんに聞きました。

石山さんがビジネス書を読む理由

 シェアハウスにシェアカー、シェアオフィスと「誰かと何かを分かち合う」スタイルが急速に広まっています。そんなシェアを通じた新しいライフスタイルなどを提案する「シェアの伝道師」として活躍しているのが、石山アンジュさん。石山さん本人は自分のことを「思想家・研究家だと思う」と語ります。

 「私は『シェア』という考えを広めることで、個人や社会がどんな影響を受けて、どんなふうに変わっていくかを探求しています。いわばムーブメントを起こす側で、『最近はやっているからシェアリングエコノミーを取り入れよう』というフォロワー側ではないんです」

 石山さんがビジネス書を読む理由は二つ。一つは社会がテクノロジーの進化によって、「未来へ向かって、どう変化していくか」を知るため。もう一つはいくら時代が移り変わっても、変化しない物事の原則・原理・真理に触れるためです。

 「例えばシェアリングエコノミーは新しい分野ですが、『人とのつながり』という点に着目すれば、日本の歴史にある江戸時代の長屋や銭湯といった場や、東洋の哲学にも当てはまる部分があります。シェアという自分の研究分野を深めるための手段として、読書は欠かせません。反対にニュースやトレンドを知るだけなら、ネットで十分かも」

 ただ、意外なことに石山さんは「本の中に答えは求めていない」のだとか。

 「この地球上に確かなもの、答えのあるものって何一つ存在しないと思うんです。どうやって地球が誕生したか、人類が存在している意味についても、誰ひとり正しい答えは分かりませんよね。答えを求めるというよりは、例えば『シェアの本質は人とのつながりではないか』と自分の中で仮説を立て、検証するために本を読む。そうすることで、自分の考えやビジョンがビビッドになるんです

 そして、その先に生まれるのが「自分らしさ」だといいます。

 「実は『自分らしさ』って、他人が自分を見た時の評価で、自分でつくるものではありません。興味のある分野を深めれば、それを人に向けて発信したり、SNSでムーブメントや事業を起こしたりもできます。その広がった先にあるものが『自分らしさ』であって、無理に自分でつくろうとすることは意味がないと思います」

 つい、お手軽な「今日から変われる!」「自分らしく生きる○○メソッド」といった本に飛びつきがちですが、石山さんの探求を深める読書法を見習いたいものですね。

「興味のある分野を深めた先にあるのが、自分らしさ」と語る石山さん