あなたのための特別な本を、目利き力に定評があるカリスマ書店員が選びます。月替わりでおすすめ本を選んでくれる当企画、初回に登場するのは、東京・日比谷のHMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE店長・花田菜々子さん。「4月が苦手」という花田さんがつづります。

偽りの自分を少しずつ脱ぎ捨てる

 4月というとなんだかフレッシュな気配があちこちで漂う。それはニュースの入学式や入社式の映像だったり、街を買い物していて目につく「フレッシャーズ」「新生活フェア」という言葉だったり。それらはあたかもポジティブなことであるように発信される。

 しかし端的に言って、4月は地獄である。4月というか新しい環境になじむということが私には地獄である。

 私は「普通」の社会で生きることがとても苦手だ。新しい世界をのぞき見するのは大好きなのだけれど、それが「ここにいなければならない」「ここになじまなければならない」という強制力を発動する瞬間に、それは強いストレスとなって降りかかってくる。

 新しい仕事に取り組むだけでも大変なのに、意味不明のルールや不文律があったり、愛想笑いを連発しなければならなかったり、愚痴中心のつまらない会話の中にずっといなければいけない状況に追い込まれたり。しかも、新しい環境だからそれを笑顔で前向きな気持ちで行わなければいけないという自己暗示にかかり、どんどん自分が自分から離れていって疲れ果ててしまうのだ。

 というわけで、新しい環境でがんばるつらさを感じている人には、偽りの自分をがんばるのではなく、どうかふてぶてしさをがんばってほしいと思う。


『ダルちゃん』

「ほんとうの自分で生きていく」という覚悟

 4月は歓迎会のシーズン。会社での大きな飲み会をストレスに感じる人は多いのではないか。『ダルちゃん』序盤にもそんなシーンが描かれる。ダルちゃんは普通のOLのふりをしているが本当はダルダル星人で、正体がバレて嫌われることを恐れ、周囲をまねしながら生きている。飲み会で男性の先輩社員の自慢話や女性蔑視の発言にもニコニコと対応し、「大丈夫、私はうまくできている」と安堵する。ところがそれは自分を傷つける出来事の第一歩でしかなかった――。

 「普通に」生きようとばかりする自己肯定感の低い女子が、偽りの自分を少しずつ脱ぎ捨て、信頼できる人との出会いや、ほんの少しの勇気や、自分の思いを表現することを通して、ほんとうの自分を取り戻す物語。日々生きづらさを感じている人はもちろん、会社の中でうまくやることなんてできるけど、うまくやり過ぎて、何がほんとうの自分かわからなくなってしまった、という人にも読んでほしい。きっと、つらくて何もかもがやりきれない夜に、そっと寄り添ってくれるような、それでいてすごく力強いメッセージと祝福を与えてくれるような本だ。

 そして「この、ほんとうの自分で生きていく」と覚悟してしまえば、どんな場所でも意外と受け入れられたりするものだ。「こうでなければ」と縛っていたのは世間の人々ではなくて、自分の思い込みだったりするのかもしれない。

はるな檸檬『ダルちゃん』全2巻、各1冊850円(税抜)、小学館