日々刻々と変化する検疫体制

 中国の複数の省・市などにおいて、日本などからの渡航者に対し、14日間の自宅観察または医学隔離観察を求める措置が取られている。上海の小区やビルなどの出入り口では、検温と出入証明がないと出入りできず、厳密な管理が行われている。

 「3月15日、上海在住の日本人家庭が、一時帰国していた日本から上海に戻ったところ、現地に家があるにもかかわらず、上海市が管理する場所で隔離されることになった」と坪内さんは言う。また、3月16日0時から、北京市は海外からの入国規制を行っており、長期滞在ビザを持つ人は入国可能だが、帰国後、北京市に入るすべての人を集中観察所に移送し、14日間の隔離観察を行っている。

 3月17日の発表で上海の検疫体制がさらに強化され、国際線で到着した人で自宅隔離を希望する人は全員PCR検査を受けることになった。空港に着陸して入国手続きが終わった後、小区ごとにバスに乗り、検査施設に向かう。坪井さんは知り合いの知人である、上海で働く日本人のケースについて語る。

 「3月17日の16時過ぎに上海到着する飛行機で上海に戻ったときに、入国検疫強化を知ったそうで、検査が終わったのが深夜1時30分。さらにその後、検査結果が出るのに6~8時間かかると聞きました。正直、このタイミングでは、よっぽどの理由がない限り上海に行かないほうがいいと感じてしまいます」(坪井さん)

 中国の人々が「政府に言われたから」ではなく、自らウイルスの感染を恐れて基本的に家から出ないようにしている様子がうかがえる。「中国では医療レベルがあまり高くない地域もあり、自分で身を守る意識が高い」と、中国をよく知る日本人は話す。日本でも、長引くコロナ危機に備え、自らの意識を高めていく必要がありそうだ。

取材・文/小田舞子(日経doors編集部) イメージ画像/PIXTA