「たくさんの人が家や大切な人を失い、がれきだらけの街での生活を余儀なくされている状況で、石巻の人たちが『自分たちの暮らしは自分たちでどうにかする』と、前を向いて頑張っていました。その姿がとても力強くて。当時、同級生たちに流されるままに就職活動をしていた自分の『日常』がどうでもよくなりました」

ボランティアとして東京と石巻とを行き来していたが、次第に石巻にいる時間が増えていき移住につながった
ボランティアとして東京と石巻とを行き来していたが、次第に石巻にいる時間が増えていき移住につながった

突然、飛んでいったエントリーシート 就活をやめようと吹っ切れた

 実際に就活をやめたのは、2011年6月のこと。東京に戻ってきても、SNSで石巻の復興の様子をチェックしていた渡邊さんは、「東京にいる時間がもったいない。早く石巻に行きたい」と思うようになっていた。そんななか、気持ちに踏ん切りがつく出来事が起こった。

「自宅から最寄り駅まで、企業説明会の資料やエントリーシート一式を手に持って歩いていました。すると突然、風が吹いて、書類が全部、パーッと飛んでいったんですよ。『もうやめていいよ』と言われたような気がして……。そのままUターンして自宅に戻り、就活をやめました。飛んでいった書類を拾ったかどうか、覚えていません」