「自分の強みが生かせる仕事ってなんだろう」「周りに流されるままの人生でいいのだろうか」――。20代前半の頃、そんな悩みを抱えてもんもんとしていた渡邊享子さんが変わったきっかけは、東日本大震災後に宮城県石巻市を訪れたこと。その後、同市に移住し、起業。見知らぬ土地に飛び込むことで、ようやく「自分らしく働くこと」の意味を見つけた彼女の人生に迫ります。

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後半 石巻の女性企業家 移住者増やし、地域経済を活性化

渡邊享子さん(32歳)。合同会社「巻組」代表社員。1987年埼玉県生まれ。東京工業大学大学院社会工学専攻修了。東日本大震災後から宮城県石巻市でボランティア活動を続け、2012年に同市に移住。15年に巻組を立ち上げ、代表を務める
渡邊享子さん(32歳)。合同会社「巻組」代表社員。1987年埼玉県生まれ。東京工業大学大学院社会工学専攻修了。東日本大震災後から宮城県石巻市でボランティア活動を続け、2012年に同市に移住。15年に巻組を立ち上げ、代表を務める

“皆と同じ生き方”に違和感を覚えていたとき、震災は起きた

 埼玉県出身で東北に縁もゆかりもなかった渡邊享子さんが石巻を訪れたのは、東日本大震災後の2011年5月のこと。当時は都市計画を専攻する大学院生で、就活真っただ中。周囲に流されるように大手のコンサルティング会社などを受けていたが、希望する会社から内定がもらえない。もんもんとしていたときに震災が起き、活動を一時中断。研究室の仲間と共に同地を訪れたことで、それまでとらわれていた価値観が大きく変わった。