自己肯定感は「積み重ね」でしか生まれない

『余裕』でメジャーデビューしてから2年弱。2020年2月にリリースしたEP『ミラクルミー』に収録された『やっちーまいな』という曲は、「自己肯定感爆アゲ」をテーマに書いた曲だという。

「自己肯定感っていう言葉は流行っていて、手垢がついたような言葉に聞こえたりもするけれど、私にとっては大事。なぜかといえば、『自分が悪い』と思って生きてきた時間が長いから

 彼女にとって重要な価値観は、「正しいかどうか」ではなく、「かっこいいかどうか」。あるとき、「自信があるって、すごくかっこいいことだ」と気づいた。

 そう考えるようになったきっかけは、高校生のときに出会ったバンド「ナンバーガール」のボーカル兼ギターの向井秀徳さんだという。自信に満ちあふれているその姿は、とにかくかっこいい。その影響を強く受け、自信を持てるように頑張ってきた。

 自信を持つコツは、「積み重ね」だという。

「小手先の『自分を好きになる方法』で一瞬救われた気になるけれど、人は簡単に変わらないし、本質的には救われない。でも、きちんと自分に向き合って、一つひとつ行動して習慣にして、ひたすら自分のレベルを上げていけば、確実に変われる。私がやっているのは、思いついたらすぐ行動すること。思いをため込まず人に言うこと、自分のセンスをしっかり磨くこと」

 もう一つは、世の中の評価に依存しない「自分の物差しを持つこと」。

「多くのアートや人、国や文化に触れて、何が素敵と思うかの価値観を積み上げてきました。結局『オリジナリティー』は、自分が何を見て触れてきたかのミクスチャー。それを丁寧に作り上げていくことは、間違いなく自信になります」

一つひとつ行動し、習慣にする「積み重ね」で、自己肯定感を育んできた。
一つひとつ行動し、習慣にする「積み重ね」で、自己肯定感を育んできた。

 とはいえ、世間の目が気になったり、誰かに否定されたりしたとき、その自分の軸は崩れてしまわないのだろうか。

「周囲の『それは変だ』という声に負けてしまうことはしょうがないけど、でもそこは踏ん張らないと自分が死んでしまう。だから最初に何が好きかをきちんと積み上げるのが大事です。ファッションひとつ取っても、自分がかわいいと思うものよりも世間一般の物差しを優先すると、だんだん人生観や人間性まで誰かの物差しになってしまう

音楽で誰かを救って、世界を良くしていきたい

『余裕』をはじめとしたいくつかの楽曲は、自分を打ち出していくときに感じる、ある種の「同調圧力」に打ち勝つ装置ということも意識して作っている

 最初は「見返したい」気持ち、そして生活のためにライブに出た彼女は、今は「誰かを救いたい」気持ちが原動力になっている。

「たとえ人を見返すことができても、終わりはないんですよ。今は簡単に言うと、世界を救いたい気持ちでやっています。世界平和のために……というと大げさかもしれないですけど、ちょっとでも自分ができることをして、世界を良くしていきたい」

 世界を良くするため、彼女が自分と向き合って見つけた考えのひとつが「フェミニズム」だった。

後編へ続く

あっこゴリラ『ミラクルミーE.P.』
自身の強さと弱さに向き合いながら生まれた『ミラクルミー』『超普通』『やっちーまいな』など5曲を収録。「仕事や私生活で苦しかった2019年をプラスに感じることができた作品」。 (ソニー・ミュージック/CD通常盤1500円/Spotify/Apple Music & iTunes Store/LINE MUSIC/AWA ほか)

取材・文/後藤香織 写真/名和真紀子