数少ない女性伴走者の一人、日野未奈子さん。リオデジャネイロパラリンピックでは、女子マラソン(視覚障害)で5位に入賞した近藤寛子選手の伴走を務めた。「人間は助け合うことで前に進みやすくなる。その大切さを伝えていきたいです」と語る彼女のストーリーを紹介します。

日野未奈子さん
1995年愛媛県生まれ。みずほフィナンシャルグループ所属。中学から陸上競技を始め、中距離で全国インターハイに出場。全国高校駅伝代表選手としても活躍。立命館大学陸上競技部に入部後、伴走者に。リオデジャネイロパラリンピック女子マラソン代表の近藤寛子選手の伴走者として出場し、5位入賞。井内菜津美選手の伴走者として東京パラリンピック出場を目指す

きっかけは1本の電話「リオを目指してみないか」

 リオデジャネイロパラリンピック女子マラソン(視覚障害)5位入賞、近藤寛子選手の伴走を務めた日野未奈子さん。数少ない女性伴走者だ。

 伴走者になったきっかけは、所属する立命館大学陸上競技部コーチからの「リオを目指してみないか」という1本の電話だった。中距離選手として伸び悩み、落ち込んでいた時期。困惑しながら続きを聞くと「視覚障害者ランナーの伴走者として」ということ。「結果が出ず、コーチに見捨てられたかと(笑)。でもやってみたいと思った」

 1カ月後、近藤選手と初めて練習したときはうまく伴走できるか不安だった。だが90分間ゆっくりと走りながら互いの近況を話しただけで、その不安は杞憂(きゆう)に終わり、障害者に対するイメージも一変。

視覚障害者ランナーと伴走者をつなぐ「きずな」という伴走ループ
視覚障害者ランナーと伴走者をつなぐ「きずな」という伴走ループ

 「近藤さんは3人の子供を育てながらフルタイムで働くワーキングマザー。障害があってご苦労されていると思いきや、『走ることが生きがいやからリオに出るねん!』と底抜けに明るい性格で、逆にパワーをもらいました。相手のリズムに合わせて走るのも楽しかったし、難しくなかった」

 しかしよくよく話を聞くと、当時の近藤選手は日本ランキング7位。リオの代表3枠に入るのは誰もが不可能だと思った。