障がい者雇用を担う楽天ソシオビジネスで社長を務める川島薫さん。「社員は全員、『うちの子』。叱るときは厳しく叱るし、褒めるときはとことん褒める」と語る、彼女のストーリーを紹介します。

社員はみんな「うちの子」 時には本気で叱る

川島薫さん
0歳のときに先天性両股関節脱臼の診断を受ける。高校卒業後の1980年に教育事業の出版社に就職し、経理業務に従事。85年、出産を機に主婦業に専念。99年から空調メーカーのコールセンターの派遣社員に。スーパーバイザーとして8年間勤務した後、CADの訓練校に入学。2008年、楽天ソシオビジネス入社。採用、人事、労務などのリーダー、マネジャー、部長職を経て13年に取締役、18年に副社長、19年6月から現職。

 楽天グループの特例子会社として、障がい者雇用を担う楽天ソシオビジネス。「デスクに戻ることがほとんどない」ほど忙しくフロアを行き来するのは、6月から代表取締役社長を務める川島薫さんだ。

 「社員はみんな『うちの子』。障がいについては配慮しますが、それ以外のことでは遠慮せず、時には本気で叱ります」

 「先天性両肢関節脱臼」という股関節の疾患があり、自身も障がい者のひとりである川島さん。高校卒業後は、一般企業の経理担当を経て専業主婦になり、3人の子供に恵まれるが、離婚を機に社会復帰。15年間のブランクを経て、空調メーカーのコールセンターの派遣社員に。シングルマザーとして、仕事と子育てに奮闘した。その仕事ぶりが評価されてスーパーバイザーとなり、スタッフの採用や育成にも携わるようになる。

 その後、「マネジメントではなく現場で働きたい」とハローワークで仕事を探し、2008年に楽天ソシオビジネスに転職。入社直後は決まった仕事もなく、「楽天市場のHPを眺めていた」と言う川島さんだが、採用面接に立ち会い、転機が訪れる。

 「応募者の多くは自己アピールもせず、『できないこと』を主張するだけ。あまりの覇気のなさに、『本当に働く気があるの?』と疑問を持ちました。

 でもそれは、彼らが主体的に働いた経験がないから。モチベーションを高めるためには、もっとやりがいを持てる環境づくりが必要だと考えました

中央の女性が川島さん。フロアを歩き、社員に話しかけるのが日課
中央の女性が川島さん。フロアを歩き、社員に話しかけるのが日課

 社員のやる気を引き出す上で最初に課題だと感じたのは、給与の低さ。会社に交渉したが、「特例子会社は、収益がなくても存在するだけで役割を果たしている。社員に高い給料は払えない」と受け流されてしまう。「その言葉が悔しくて。絶対に自分たちの力で黒字を達成してみせよう、と決意したんです