働く女性の道は「ああはなりたくない」の連鎖で開かれてきた

CASE1 勤務先にお手本にしたい「ロールモデル」がいません
【結婚2年目 Aさん(29歳)のもやもや】

 大学時代の同級生と結婚して2年目。そろそろ子どもも欲しいと思うのですが、職場のワーキングマザーの先輩たちを見ていても、なんだか楽しそうじゃないんですよね。いつも慌ただしそうに仕事して、時間になると走り去るように帰っていく姿を見ていると、私はそんなふうにできないと感じます。できないというか、「ああはなりたくない」って思ってしまうんです。 社内にロールモデルとなる先輩を見つけられず、今の会社で働き続けていいのか不安になります。

 先輩の姿を見て「ああはなりたくない」という気持ち、私も20代の頃そう思っていたのでとてもよく分かります。

 私は間もなく40代を迎えますが、私たち世代が20代の頃、プライベートを犠牲にしながら仕事に邁進する30代の先輩を見て、「自分は仕事も続けたいけれど結婚も出産もあきらめたくない」と感じていましたし、多くの同世代も同じように考えている人が多かったです。

 そんな私たち世代が、ワーキングマザー(以下、ワ―ママ)量産期を切り開いてきたともいえますが、一世代下の女性たちは、仕事と子育ての両立に髪を振り乱し、疲れ果てている私たちの様子を見て、「ああはなりたくない」と感じていることでしょう。

 私がかつて20代の頃に見ていたのは、仕事にまい進する先輩女性たち。彼女たちの一世代上は、まだ男女で仕事内容や待遇に大きな差があり、お茶くみや軽作業などが女性の主な仕事とされていました。そして、寿退社していく先輩たちを見て、男性と対等に働く道をつくってきたのです。

 そう、どの世代においても、働く女性たちは一世代上の先輩たちを見て、反面教師にしながら行動してきたんです。これらの連鎖で新しい流れが生まれ、働き方、生き方の選択肢が徐々に広がり、今では多様な選択ができるようになってきたのです。

 だから、皆さんが今「お手本となるロールモデルがいない」と思うのはある意味、とても健全なことだと私は思います。

 では、これから皆さんが目指すべき「理想のワーママ」はどんな姿なのでしょうか。