これまで何千回ものプレゼンをこなし、経営者や政治家のスピーチライターとして活躍してきたひきたよしあきさん。ロジックや立場、お金の力で人を動かすのではなく、敵をつくらず相手が反射的に動いてしまうような「伝わる言葉」の極意を紹介していきます。
論理で人は、動かない
スピーチライターのひきたよしあきです。
35年近く、コピーライターやスピーチライターをやってきました。商品を買ってもらう言葉、選挙で投票してもらう言葉を書く、第一線で働いてきました。大学でも講義を持ち、小学生にも言葉の面白さを教えてきました。あれこれ経験した結果、至った結論は、たったひとつです。
「論理で人は、動かない」
ということです。
JR東海の名作コピーに、
「そうだ 京都、行こう」
があります。制作時にはさまざまなロジックを考えたことでしょう。しかし、コピーになった言葉は、
「そういえば最近、京都に行ってないなぁ。そうだ! 久しぶりに京都に行ってみよう」
という思いでできている。
論理ではなく、修学旅行以来、京都に久しく行っていない大人が共通に抱く思いによって言葉が組み立てられている。
「そうだ!」と言われて、思わず腰が浮く。「~行こう」と誘われて、スケジュールを見て空いた日を探し始めている。名作コピーとは、論理を超えて、人を動かす力があるのです。
今月から始まるdoorsアカデミー連載では、「思わず人を動かす」ことを目的とした言葉の使い方を解説します。ロジック、立場、お金の力で人を動かすのではなく、相手が反射的に動いてしまうような魔法の言葉を紹介していきます。あなたが、誘ったとたん、相手が「京都行きのチケット」を予約に走るような、即効性のある言葉を学んでいきましょう。